研究課題/領域番号 |
25251014
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
今泉 和則 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (90332767)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 細胞内情報伝達機構 / 小胞体 / 発生・分化 / 疾患生物学 / ストレス |
研究概要 |
本研究課題では、小胞体ストレスセンサーから発信される様々なシグナル経路の解析を行い、生命現象の中での小胞体ストレス応答の重要性を分子レベルで解き明かすことと、この系の破綻によって生じる慢性炎症性疾患の分子機序解明を目指している。今年度は小胞体ストレスセンサーの単純ノックアウトおよびコンディショナルノックアウトの作成と解析を通じて以下のことを明らかにした。1)軟骨細胞に発現する小胞体ストレスセンサーBBF2H7は膜内で切断された後に小胞体内腔ドメイン部分が細胞外に分泌され、ヘッジホッグおよびその受容体と3者コンプレックスを形成してヘッジホッグシグナルを活性化することを明らかにした。このカスケードは軟骨形成に必須であり、BBF2H7が欠損したマウスでは成長軟骨部分の形成が極めて悪くなることを確認した。2)大腸粘膜上皮に発現する小胞体ストレスセンサーOASISのノックアウトマウスに大腸炎を誘発させるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与すると、野生型マウスに比べ大腸に出血を伴う極めて強い炎症反応が生じ、個体死を誘発した。培養細胞でこのメカニズムを解析した結果、OASIS欠損マウスの大腸粘膜杯細胞では粘液の産生と分泌が障害されていることが明らかになり、粘液分泌不全がDSS-誘導大腸炎の感受性を高めたものと考えられた。従って、感染や異物に対する大腸粘膜の保護にOASISは重要な働きを担っているものと示唆された。3)骨髄マクロファージで発現する小胞体ストレスセンサーLumanの遺伝子発現を抑制すると、マクロファージから破骨細胞への分化が障害されることがわかった。特に破骨細胞の特徴である多核巨細胞が全く認められなかったことから、Lumanは破骨細胞の多核化に重要な働きがあることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では以下の3つの主要な課題に取り組む。1)小胞体ストレスセンサーの生理機能とシグナル経路、2)慢性炎症における小胞体ストレス応答の役割、3)小胞体機能調節薬開発のためのスクリーニング系構築。初年度は1)のテーマを中心に実験を進め、想定したよりも多くのデータを積み上げることができた。さらに2)に関しても遺伝子ノックアウトマウスを汎用して多くのデータが得られた。次年度は、今年度に作成できた各小胞体ストレスセンサーのコンディショナルノックアウトマウスを主に用いて2)を中心に研究を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
小胞体ストレスセンサーの生体内での働きや疾患発症における役割をさらに掘り下げるため、今年度の成果を基盤にして、炎症応答シグナルをどのようなメカニズムを制御しているのかを明らかにしていく予定である。その際に、初年度に作成できた各小胞体ストレスセンサーのコンディショナルノックアウトマウスを多用して、組織特異性、時期特異性も踏まえながら解析を進める。本研究から得られた成果を基盤にして新たな疾患治療薬物のスクリーニング系構築も目指したいと考えている。
|