研究課題/領域番号 |
25251019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 彰二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60304086)
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研究分担者 |
検崎 博生 独立行政法人理化学研究所, 情報基盤センター, 研究員 (20402464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タンパク質 / p53 / DnaA / Ste5 / シミュレーション |
研究概要 |
3つのターゲットp53, DnaA, Ste5各々について、分子動力学(MD)シミュレーション研究を進めた。また、粗視化分子シミュレーションソフトウエアCafeMolを計算に利用するとともに、継続的な改良を行った。 1)多機能性転写因子p53については、非特異的DNA結合状態から特異的なDNA配列への結合過程の分子シミュレーションに成功した。二つの状態で、p53の構造が著しく異なること、また非アセチル化状態ではDNA上をスライディングして特異配列を探索するのが主であるのに対して、アセチル化状態では主に3次元拡散で特異配列を探索することなどが明らかになった。 2)染色体複製開始因子DnaAについては、大腸菌の複製開始oriC領域の半分にあたるDNA領域と、IHF、およびDnaAのAAA+ドメインおよびdsDNA結合ドメインを6分子含む分子系を対象とし、その初期構造を構築し、粗視化分子シミュレーションを行った。二本鎖DNA開裂複合体に至る前の複製初期過渡的複合体として、AAA+ドメインがらせんリング状の複合体を形成しつつ、同時に6個の dsDNA結合ドメインが所定の結合モチーフに結合することは容易ではなく、シミュレーション中で限定的な状況でのみ実現可能であった。どのような条件でこれが可能となるか、今後、明確にしていく。 3)MAPキナーゼ・シグナル伝達のscaffold蛋白質Ste5については、初年度はまず、MAPKK (Ste7) からMAPK (Fus3) へのシグナル伝達の初期構造モデルとして、両者の複合体構造をモデリングした。Ste7がFus3をリン酸化する際の両者のコアドメインの結合はかなり弱く、計算上も両者が自発的に相互作用でひきつけあうことは、計算ではほとんど見いだせなかった。そこで計算アルゴリズムを駆使して強制的に両者を近づけることで、複合体構造モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p53については、当初計画を以上の進捗である。DnaAの計算もほぼ予定通り順調に進んでいる。Ste5については、Ste5が関わる前段階のSte7とFus3の複合体構造モデリングが予想より難しくやや遅れ気味である。全体としてはおおむね順当と言える。
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今後の研究の推進方策 |
p53については、当初計画通り、様々な認識配列(ギャップ長)に対してp53がどのように配列を認識して結合するかをシミュレーションにより解析するとともに、アセチル化、リン酸化によるp53動態の変化を解析する。DnaAについては、複製初期過渡的複合体として可能な構造を明確にしたのち、この状態から開裂複合体に至る動態を、分子シミュレーションによって明らかにする。Ste5については、Ste5コア-Ste7-Fus3の構造モデリングを行った後、その不活性型から活性型への動的過程をシミュレーションにより明らかにする。 また、これら個別の系における考察を通じて、天然変性領域のマルチスケールモデリングのより高精度な実現に向けて、粗視化モデルの改良、そのソフトウエアCafeMolへの実装と検証を行う。
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