研究課題/領域番号 |
25251021
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
貝淵 弘三 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00169377)
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研究分担者 |
渡辺 崇 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10402562)
西岡 朋生 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70435105)
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞内情報伝達 / 細胞極性 / リン酸化 / 質量分析 |
研究概要 |
1. Kinase-interacting substrate screening (KISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング(担当:貝淵、天野):当研究室で開発した質量分析を用いたin vitro基質スクリーニング法であるKISS法により、極性関連キナーゼRho-kinase, aPKC, PAK, Cdk5について基質の網羅的スクリーニングを行った。その結果、Rho-kinase, aPKC, PAK7, Cdk5についてそれぞれ113、15、78、190の基質を同定した。 2. Phosphatase Inhibitor and Kinase Inhibitor Substrate Screening (PIKISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング(担当:貝淵、西岡):当研究室で開発された質量分析を用いたin vivo基質スクリーニング法であるPIKISS法による基質スクリーニングのためにaPKC阻害剤及び脱リン酸化酵素阻害剤(Calyculin A)の細胞処理の最適化及び予備的な質量分析により32の基質候補を得た。また、GSK3beta等の極性関連キナーゼ阻害剤について細胞処理の最適化を行っている。 3. 新規基質の細胞内におけるリン酸化プロファイリング(担当:貝淵、渡辺、天野、西岡):KISS法で得られた基質候補について、リン酸化抗体精製および感度の確認を行った。また、生体試料より対象となる蛋白質を免疫沈降し、質量分析にてリン酸化ペプチドを解析する系を立ちあげ、この系によりリン酸化がモニターできることを確認した。 4. 新規基質の生理機能・制御機構の解析(担当:貝淵、渡辺、天野、西岡):得られた基質候補についてパスウェイ解析を行い、微小管形成に関与する可能性の高い基質候補のリン酸化部位の変異遺伝子や変異蛋白質を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)Kinase-interacting substrate screening (KISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング:極性関連キナーゼRho-kinase, aPKC, PAK, Cdk5のリコンビナントタンパク質精製およびKISS法による基質の網羅的スクリーニングは順調に進捗しており、Rho-kinase, aPKC, PAK7, Cdk5についてそれぞれ113、15、78、190の基質候補を得ている。 (2)Phosphatase Inhibitor and Kinase Inhibitor Substrate Screening (PIKISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング:PIKISS法のためのリン酸化酵素阻害剤の処理条件の最適化はaPKC、GSK3betaについては完了し、サンプル数を増やしてリン酸化基質のデータを増加していく段階に達している。そのほかの極性関連キナーゼの阻害剤について細胞処理の最適化を行っている。 (3)新規基質の細胞内におけるリン酸化プロファイリング:KISS法及びPIKISS法で得られた極性関連分子についてリン酸化抗体を作成し、Tiam1 Ser29、CLASP2 Ser940の抗体を精製した。また、KIF2a リン酸化抗体を作成中である。KIF2aについては蛋白質を免疫沈降し、質量分析にてリン酸化ペプチドを解析する系を立ちあげ、この系によるリン酸化モニターを行っている。 (4)新規基質の生理機能・制御機構の解析:得られた極性関連基質候補Tiam1、CLASP、KIF2a等についてはリン酸化部位の変異遺伝子や変異蛋白質を作製した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)Kinase-interacting substrate screening (KISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング:KISS法によりスクリーニングを行う極性関連キナーゼをさらに増やし、LKB、MARK等についての網羅的スクリーニングを行う。また、aPKCのようにスクリーニングの結果得られた基質候補の数が少ないキナーゼについては、キナーゼの基質選択性、分子構造を考慮したリコンビナントタンパク質の改変等により基質候補分子の更なる同定を行っていく。 (2)Phosphatase Inhibitor and Kinase Inhibitor Substrate Screening (PIKISS)法によるキナーゼ基質のスクリーニング:PIKISS法のためのリン酸化酵素阻害剤の処理条件の最適化を順次行い、条件検討を行ったキナーゼからリン酸化基質の網羅的スクリーニングを行う。 (3)新規基質の細胞内におけるリン酸化プロファイリング:Tiam1、CLASP、KIF2a以外の KISS法及びPIKISS法で得られた極性関連分子についてもリン酸化抗体を作成を行っていく。抗体の作成のためのリン酸化部位の選別と抗体作成期間中の研究に質量分析によるリン酸化モニターを利用することで研究の効率化、高速化をはかる。 (4)新規基質の生理機能・制御機構の解析:得られた基質候補については順次in silicoにてパスウェイ解析を行い、キナーゼとその基質がどのようなシグナルネットワークに帰属するか検討する。 また、Tiam1、CLASP、KIF2aについて作成したリン酸化部位の変異遺伝子や変異蛋白質、リン酸化抗体をもちいて、細胞内局在の顕微観察及び機能解析を行う。細胞において基質蛋白質の機能抑制を行い、野生型リン酸化部位の変異型遺伝子による機能回復実験を行うことで、極性形成過程におけるリン酸化シグナルの生理的意義を調べる。
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