研究課題
CHUP1のactin繊維重合機能がCHUP1のC末端側の結晶構造解析、および生化学的解析から明らかになった。さらに構造解析からアクチン重合、および二量体化に重要と推測されるアミノ酸も特定され、そのアミノ酸を置換したCHUP1 C末端ではアクチン重合も見られず、またこれらのアミノ酸置換変異CHUP1遺伝子の遺伝子導入個体では葉緑体運動が誘導されないことが生理学的実験からも証明された。このことから、葉緑体の運動推進力はCHUP1によるcp-actin繊維の重合が主要因であることが更に裏付けられた。一方、重合されたcp-actin繊維が細胞膜に固定されていなければ、アクチン重合も葉緑体を押し出す力にはならない。そのためには、細胞膜にN末端側で結合し、アクチンの束化因子であるTHRUMIN1が重要な役割を担っていると考えられる。THRUMINが青色光照射によりphot2依存的にリン酸化されることがin vitro系で明らかになり、THRUMINのリン酸化によってcp-actin繊維は細胞膜にしっかり固定され、cp-actin繊維が重合された分だけて移動するという、推進力発生モデルが補強された。青色光を受容して活性化されたphot2がCHUP1のアクチン重合を開始させ、同時にTHRUMINをリン酸化することで、膜結合が強固になり、葉緑体は移動する。
2: おおむね順調に進展している
葉緑体運動の推進力発生機構のモデルは研究当初から描かれていたが、その具体性、実証性には欠けていた。また多方面の実験をしなければならない本研究課題において、当研究室の人力・技術力・経済力では、迅速な研究進展は難しい面があった。しかし分担者の孔三根が、構造学を専門とする共同研究者九州大学生体防御医学研究所神田教授の研究室の助教となったこと、加えて、産業技術総合研究所の上田太郎博士とはアクチン重合の生化学的研究で、慶応義塾大学理工学研究科の岡島公司博士とはin vitroにおけるTHRUMINのphot依存的リン酸化に関する研究で共同研究を行うことができ、飛躍的な進展が見られた。これらの成果から推進力発生機構のモデルは現実味を帯びてきた。これらの共同研究は続いており、残り1年で、さらなる発展が望める状況である。以上の状況を判断し、(2)おおむね順調に進展している。とした。
CHUP1 C末端側の結晶構造解析および生化学的機能解析によりCHUP1がアクチン重合を促進することが明らかになったが、セミin vitro系である細胞膜ゴースト上での重合は見られていない。CHUP1複合体を形成する因子が欠けている可能性があるので、in vivoで実際に起こっているCHUP1のアクチン重合機構を詳細に知るために、CHUP1複合体および葉緑体上のphot2複合体を単離し、その構成要因を明らかにする。昨年度の結果では、CHUP1―GFPは葉緑体よりは細胞膜分画に移行するので、細胞膜分画のMAS解析を行う。一方で、プロトプラストの破壊方法を検討し、セミin vitro系上でcp-actin繊維の重合を試みると伴に、cp-actin重合が推進力形成に関与していることを全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)、クライオ電子顕微鏡による構造学の面からも詳細に解析し、cp-actin繊維による葉緑体移動における推進力発生機構を1分子レベルで解明する。Cp-actinを細胞膜に結合させていると考えられるTHRUMINの機能を見極めるために、photによるリン酸化と束化機能の関係も調べる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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