研究課題/領域番号 |
25251036
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
七田 芳則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60127090)
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研究分担者 |
山下 高廣 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50378535)
今元 泰 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80263200)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光受容 / オプシン / 機能多様性 / 分子メカニズム / モデル動物 |
研究概要 |
4つのサブグループに分類できる脊椎動物のOpn5グループについて、その分子特性・生体内発現部位・生理機能の多様性を明らかにするために、以下の研究を実行した。 1.生体内での発現部位が明らかでなかったOpn5L1とOpn5nについて、ニワトリとメダカを用いて解析した。Opn5nについては、眼の網膜において、視細胞に特異的に発現することがわかった。視覚オプシン以外で、網膜内で視細胞に特異的に発現するオプシンはこれが初めての例であり、メラトニン合成など視細胞が担う視覚以外の光受容機能に関わる可能性が考えられた。Opn5L1は網膜での発現量が少ない一方、脳内のいくつかの部位において発現の特異的シグナルを見いだすことができた。さらに、これらOpn5が関わる生理機能を明らかにするため、TALEN法を用いてメダカで遺伝子破壊することを順次行っており、いくつかのノックアウトラインの作製に成功した。 2.オプシン類が可視光を受容するために必要な対イオン(グルタミン酸残基)の位置の解析から、Opn5グループは先祖型の紫外光感受性から対イオンの変位が起こり可視光感受性のOpn5nが特異的に多様化したと考えられた。そこで、Opn5nの分子特性について波長感受性以外での特徴を探索した。その結果、先祖型のOpn5が持つと考えられた不活性状態(11シス型レチナール結合型)と活性状態(全トランス型レチナール結合型)との光相互変換が見られなかった。さらに別に得られた特徴としては、多くのOpn5が11シス型レチナールだけでなく全トランス型も直接結合するのに対し、Opn5nは11シス型のみを直接結合した。これは、視覚オプシンと同じ性質であり、視細胞内で機能するためには、暗ノイズの原因となる全トランス型との直接結合を減じるように特殊化したことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、脊椎動物の4つのOpn5サブグループのうち、紫外光感受性として既に分子特性の解析が進み生体内での発現部位も明らかになっていたOpn5mとOpn5L2に比べて、種々の特徴が先の2つとは異なるために詳細な解析が必要であったOpn5L1とOpn5nを主なターゲットとすることを当初の目的としていた。 Opn5nについては、可視光感受性であることだけでなく他のいくつかの分子特性がOpn5mやOpn5L2と異なることが明らかとなり、その原因として対イオンの変位が考えられた。そして、網膜内では視細胞に特異的に発現するという結果が得られ、Opn5nが関わる生理機能を探索するのに非常に興味深い。実際にノックアウトメダカの作製にも成功しており、次年度以降の生理機能の解析のベースとなっている。また、Opn5L1についても分子特性の詳細な解析と並行してノックアウトメダカの作製を行っている。メダカは3遺伝子持つが、遺伝子破壊できたものもあり、次年度以降の解析につながる成果である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、Opn5L1、および、Opn5nについての分子特性・生理機能の解析をさらに進めることを計画している。具体的には、 1.all-trans-retinalを結合したOpn5L1は可視部に吸収極大を示し、あたかも光受容体のように見える。しかし、これに可視光を照射すると、可視部から近紫外部に吸収を示さない光産物に変化する。つまり、Opn5L1では他のOpn5グループでは見られない光反応が起こっている可能性がある。そこで、生成する光産物中でのレチナールの状態を解析するため、通常の分光学的方法とLC/MS法を組み合わせて検討する。 2.Opn5L1とOpn5nの機能解析に向けて、in situ hybridizationと免疫染色により発現部位を特定する。また、前年度にTALEN法により作製した一部のOpn5L1、Opn5nのノックアウトメダカを用いて、その発現部位の確認を行い、さらに、すべてのOpn5L1あるいはOpn5nをノックアウトしたメダカの作製を試みる。
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