研究課題
葉緑体は、シアノバクテリアの細胞内共生体を起源とする。共生細胞が世代を超えて宿主細胞に維持されオルガネラ化した例は他にも多く知られている。これまでに、葉緑体分裂が宿主核コードのタンパク質群によって形成される分裂装置によって引き起こされること、その遺伝子群発現が細胞周期制御を受けることを明らかにしてきた。(1)葉緑体分裂・分配と細胞周期進行の同調化機構の解明(2)葉緑体分裂装置の原型をもつ、灰色藻の葉緑体分裂・分配機構の解明、(3)葉緑体とは別起源で、オルガネラ成立の中間段階にあるシアノバクテリア共生体の分裂・分配機構の解明を行い、真核細胞によるバクテリア共生体の分裂制御機構の進化過程の一般原理を解明することを目的とする。本年度は、上記(1)及び(2)に関して研究を進めた。(1)に関しては、単細胞紅藻Cyanidioschyzonを用い、葉緑体分裂を葉緑体分裂装置形成以前で停止させると宿主の細胞周期が前期で停止することを見いだした。つまり宿主真核細胞の細胞周期には、葉緑体分裂チェックポイントがあり、これによって細胞分裂時に、葉緑体が確実に1回分裂することが保証されることが示唆された。(2)に関しても同様に、葉緑体分裂を葉緑体分裂装置形成以前で停止させると宿主の細胞周期が、ある一定の段階で停止することを見いだした。これらの結果は、シアノバクテリアの細胞内共生による葉緑体成立後、比較的早い段階、灰色藻とその他が分岐するまでに、宿主真核細胞が、葉緑体分裂チェックポイント機構を獲得したことを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
紅藻及び、灰色藻において宿主真核細胞周期に葉緑体分裂チェックポイントが存在することを明らかにできた。さらに紅藻においては、そのチェックポイントがM期前期にあることも突き止めることができた。従って、研究は計画通り順調に進展している。
単細胞紅藻の遺伝子導入系を駆使し、葉緑体分裂の具体的にどのイベントが細胞周期によって認識されるのか、一方で、葉緑体分裂が進行するまでの間、どの様な機構で、細胞周期が前期で停止しているのかを明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Plant Cell Physiol.
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Front. Plant Sci.
巻: 6 ページ: 657
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