研究課題
平成29年度は,特に弥生人のゲノム解析を中心に解析を進めた。北部九州の渡来系弥生人である福岡県那珂川町にある安徳台遺跡から出土した人骨からDNAを抽出し,次世代シークエンサを用いたゲノムの解析を行った。その結果,渡来系弥生人のSNPは現代日本人の範疇に入ることが示された。解析した個体は弥生時代中期のものではあったが,縄文人のゲノムが1割ほど含まれていることが判明し,渡来系弥生人は既に在来の縄文人と混血していることが示唆された。また,縄文人の直系と考えられていた西北九州弥生人もSNP解析によって,相当程度の渡来系弥生人のゲノムを受け継いでいることも明らかになった。更に,東北の弥生人であるアバクチ洞窟出土の幼児骨からもDNAを抽出し,全ゲノム解析を行ったが,この個体の持つゲノムは,東北の縄文人の範疇に入っていた。弥生時代には,様々な遺伝的なバックグラウンドを持った集団が,列島の内部に混在していたことになり,このことは従来の弥生人観を訂正する必要があることを示している。縄文人に関しても,過去4年間と同様に全国各地から出土した人骨からDNA抽出と次世代シークエンサを用いた解析を継続した。北海道の礼文島の船泊遺跡出土縄文人では,現代人と同じ精度で全ゲノムを決定しており,SNP解析によってその系統的な位置と共に,様々な表現型に関する情報を取得した。一方、これまでの解析で縄文人のミトコンドリアDNAの系統では、西日本のものがより現代に伝わっていることが明らかになっている。これは渡来系弥生人が九州の縄文人と混血し,数を増やしながら東進して,関東・東北に到達したときには在来集団を人口で圧倒していたと考えると説明が付く。収集したデータをもとに,その状況をシミュレーションする数学モデルを構築した。いくつかのパラメータを変えて計算した結果,渡来系集団の人口が数十倍であったという結論を得た。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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