研究課題
基盤研究(A)
本研究では1) 生理的多型が遺伝的基盤を介して行動にも影響しているのか、あるいは2) 生理的多型と行動的類型の関係は遺伝的要因とは独立しているのか、を明らかにすることを目的とする。またこれらと併せて生理的多型性が遺伝的適応に基づくのか可塑的な適応なのかも同時に検討する。本研究では特に光環境に焦点をあて、遺伝要因として時計遺伝子群とその発現領域に、行動としてクロノタイプに、生理的多型性として光の非視覚的生理機能としてメラトニン分泌増加開始時刻(DLMO)からみた概日リズム位相のそれぞれに注目し、これらについて種々の類型をもつ行動や生理機能に対する遺伝要因の関係性を明らかにするとともに遺伝的適応性や生理的な可塑的適応性について検討する。25年度は被験者(男子大学生29名)個人のサーカディアンリズム位相の指標であるDLMOを基準に設定した朝の光刺激(2000 lux)を実施し、これに対するDLMOの前進の程度、内因性のリズム周期、朝型・夜型アンケートスコア、朝の光の照度の好みなどの測定値を求めると同時に測定項目間の関係をみた。その結果、被験者ごとに設定された朝の光曝露を3時間実施することによりDLMOの前進を確認した。この前進の程度、および夜の光によるメラトニン分泌抑制の程度と被験者のクロノタイプとはそれぞれ関係がなかった。クロノタイプの違いは内因性のサーカディアンリズム周期と有意な相関関係が認められ、周期の長いものほど夜型になる傾向がみられた。また朝の光の低照度において、DLMOが遅いものほど瞳孔の縮瞳が弱い一方で明るさ感にはDLMOの早いものと差はなかった。現在、DLMOの個人差と時計遺伝子のPer1-3との関係を解析している。
2: おおむね順調に進展している
各被験者のサーカディアンリズム位相を事前に求め、さらにリズムを一定に維持するために実験に入る前に最低一週間の事前調整をしなければならない。加えて一回の実験に3泊4日を要することを考えると29名もの被験者を実施できたことは順調といってよい。ただし、このあと集団遺伝学的解析を実施するにはN数を増やすために被験者数の追加が必要になることも考えられる。
前述のように今後集団遺伝学的解析を実施するに辺り被験者数の追加が必要になる可能性がある。これについては、26年度には夜の光の影響を検討する計画をそのまま実施し、27年度以降に追加実験をすることを考えている。
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