研究課題
最終年度である29年度は、昨年度に引き続き光による生理機能への非視覚的影響の多型性と関連する遺伝子の発見を目的に、光暴露実験被験者のDNAを用いたゲノムワイド関連解析(genome-wide association study: GWAS)を実施し、生理データとゲノムワイドSNPデータとの関連を調べた。当初期待された朝と夜のそれぞれの光に対する概日リズム位相の変異量と時計遺伝子群との間には有意な関係はみられなかった。昨年度に注目された夜の光曝露後のメラトニン分泌量(ML)と関係した4SNPsは第2染色体短腕にあり、脂質代謝に関連する遺伝子LPIN1に位置した。LPIN1は30個のエキソンからなる150kbの遺伝子で、4つのSNP はイントロン1の中、6kb以内の領域中に存在していた。これら4SNPsは40人のサンプル内で完全に連鎖していたため、そのうちの一つrs10180912(G/A)についてのみPCR直接塩基配列決定をおこなった。個体ごとの生理データに立ち返り調べた結果、rs10180912(G/A) がAAの個体はGG/AGと比べ、有意に光曝露後のMLが多く観察された。また、有意差は得られなかったものの睡眠直前のML(2日目・光暴露最後)や睡眠直前のML(3日目・暗照明最後)のメラトニン計測でもAAの個体でメラトニン濃度が高く観察された。LPIN1は脂質代謝のうちの1,2ジアシル-sn-グリセロール3リン酸の脱リン酸化反応を触媒する酵素であるが、この反応の生成物である1,2ジアシル-sn-グリセロールは生理活性を持つ脂質である。また、マウスやラットを用いた先行研究によると、LPIN1が唾液中のメラトニン濃度に関連している可能性が示唆された。本研究により夜の光曝露後のMLがLPIN1内のSNPの遺伝型の違いによって有意に異なることが示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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