研究課題/領域番号 |
25252002
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 洋佳 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00355489)
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研究分担者 |
江花 薫子 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝資源センター多様性活用ユニット, 主任研究員 (00370643)
長谷川 利拡 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (10228455)
山崎 将紀 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00432550)
林 武司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 上席研究員 (70370674)
中川 博視 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 上席研究員 (90207738)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム育種 / 環境応答 / 作物モデル |
研究概要 |
環境適応型品種のゲノムデザインを求めるための統合的モデルと、それに基づくシミュレーションシステムの開発を目的として、以下の研究を行った。 (1)「形態の環境応答モデルの構築」 日本イネ在来種・改良品種112遺伝子型について6試験地で多環境試験を行った。また、得られたデータをもとに、ゲノムワイドマーカーを用いて出穂期のゲノムワイドアソシエーション解析を行った。その結果、既知の出穂関連遺伝子が明瞭に検出され、同品種群が環境応答を研究対象とする材料として妥当であることが強く示唆された。また、同品種群について2004~2012年に収集された延べ27環境での出穂データをもとに、マーカー遺伝子型から与えられた温度・日長条件における出穂日を予測するモデルを構築した。その結果、出穂関連遺伝子マーカーやゲノムワイドマーカーを用いておよそ1週間の誤差で出穂を予測できることが分かった。なお、ゲノムワイドマーカーを用いた場合より、出穂関連遺伝子を用いたほうが高い予測精度が得られた。 (2)「生長シミュレーションモデルの構築」 上記品種から選んだ代表9品種について、作期移動試験(5、7月植え)を実施して、環境応答に関連する種々の形質の計測を行い、品種の環境応答性を簡易に表すパラメータを明らかにした。また、主要なモデルパラメータを簡易に計測するための測定項目を選定した。その結果、9品種の乾物生産の違いを、5つの品種特徴と日射・気温データをもとにモデル化できる可能性が示された。また、これら9品種のうちゲノム配列が明らかになっていない6品種について、次世代シークエンサーを用いたリシークエンシングを行った。なお、各品種2反復で行った。その結果、56万SNPが検出された。また、品種間でSNPが検出される領域の比較を行った結果、各品種におけるSNPの分布は一様でなく、強い偏りがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圃場での栽培データについては、9品種・2期の作期移動試験を行い、当初予定していたより詳細なデータ収集ができた。特に、草丈、葉齢、分げつ、葉身長については、生長にともなう変化を追跡調査し、それらを群落受講率、幼穂形成期、出穂期、葉面積、乾物重、SPAD値、収量と組み合せて解析することで、形質間関連を明らかにすることができた。また、同解析から、環境応答をモデル化するために必ず計測しなければならない形質を絞り込むことができた。これにより、次年度は、これら絞り込んだ形質だけを計測することで、当初予定していたよりも多数の系統について作期移動試験を行なうことが可能となった。また、温度や日長に応答イネの出穂を予測するモデルについては、ゲノムワイドマーカーや出穂関連遺伝子の多型をもとに、未試験系統の未試験環境における応答を予測できるシステムを構築できた。同システムは、育種などの実用的場面への応用が期待されている。いっぽう、生育シミュレーションシステムについては、今年度は開発の緒に就いた段階であり、今後の研究開発が必要である。また、今年度は初年度であったこともあり、得られた成果の論文化については不十分な結果に終わった。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究はおおむね順調に進展しており、今後も基本的には研究開始時の予定に従って研究を進めていく。なお、今年度の研究から、計測すべき形質を絞り込むことができたため、来年度は、予定よりも多数の系統を計測できることとなった。そこで、今年度の調査から後代の分離が大きいと期待される交配組合せについて、100系統以上のRILsの2期の作期移動試験を行い、絞り込まれた形質の追跡調査を行い、イネの環境応答とその収量との関連について、そのモデル化のためのデータ収集を進める。また、それらRILsについて、マイクロアレイを用いたジェノタイピングを行う。これにより、形質の環境応答を司る遺伝子について、QTL解析を通して候補の絞り込みが可能になると期待される。なお、今年度作期移動試験に用いた9品種(RILsの両親も含む)は、今年度の研究で全ゲノム配列を決定済みであり、その情報は原因遺伝子の絞り込みに有効と考えられる。また、それらデータをもとに、イネの生育の環境応答パターンをモデル化する。さらに、将来起こりうる仮想的な環境のもとでの生育パターンの予測を可能にするシミュレーションシステムの開発を進めていく。
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