研究課題/領域番号 |
25252014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 修一 東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (20222359)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 硝酸シグナル / 硝酸応答 / 転写因子 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
陸上植物の主たる窒素源である硝酸イオンは遺伝子発現パターンを変化させ、様々な応答を引き起こすシグナル分子としても働く。このような応答を担う鍵因子として同定した転写因子NLPを手がかりに、硝酸シグナル応答機構の全容解明を目指して解析を実施した。まず、NLPが植物の硝酸シグナル応答のどの程度を制御しているかを明らかにするために、転写活性化因子であるNLPに転写抑制ドメインを融合させることにより転写抑制因子へと変換したものを過剰発現している形質転換シロイヌナズナを作出し、これを用いてトランスクリプトーム解析を行った。これにより、硝酸誘導性遺伝子の大多数はNLPの制御下にあり、NLPが硝酸シグナル応答機構の中心因子であることを確認した。次に、窒素源を制限した環境で栽培したシロイヌナズナからプロトプラストを調整し、これを用いることで一過的発現系において硝酸シグナル応答を検出することに成功し、硝酸シグナル応答を迅速に解析する実験系を確立した。この解析系を活用して、重要な作物であるトウモロコシに存在するNLPも硝酸シグナルに応答する転写因子であることを明らかにした。一方で、硝酸シグナルに応答してNLPはリン酸化されるという知見を得ていることから、硝酸シグナル応答を担うN末端側領域にあるリン酸化される可能性のあるアミノ酸残基に点変異を導入した変異型NLPの活性を調べ、変異を導入すると活性が失われるアミノ残基を同定した。このアミノ酸残基が硝酸シグナルに応答したリン酸化部位と一致するか調べるため、MYCタグを付加したNLPを過剰発現しているシロイヌナズナのT87細胞を作出し、抗MYC抗体を用いた免疫沈降によって得られた試料のMS/MS解析を行った。しかしながら、現在のところ変異を導入すると活性が失われるアミノ残基を含むペプチドの同定に成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)トランスクリプトーム解析を行いNLPが硝酸シグナル応答機構の中心因子であることが確認されたこと、(2)一過的発現系を用いた硝酸シグナル応答を迅速に解析する実験系が確立できたこと、(3)活性制御に関わる可能性のあるアミノ酸残基が特定できたことは大きな進展である。しかしながら、LC/MS/MS解析によって、そのアミノ酸残基を含むペプチドの同定にはまだ成功していない。したがって、全体としては概ね順調に進展していると判断するのが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに成功していないLC/MS/MS解析による硝酸シグナルに応答してリン酸化されるアミノ酸残基の同定は、さらに多くのタンパク質を用いて解析を行うと同時に、限定分解に使用するプロテアーゼの種類を増やして、解析を行うペプチドの多様性を増大させてLC/MS/MS解析を行う。その他の解析は当初計画通りに実施する。
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