研究課題/領域番号 |
25252030
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
尾崎 研一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 領域長 (50343794)
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研究分担者 |
雲野 明 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 主査 (20414245)
山浦 悠一 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林植生研究領域, 主任研究員 (20580947)
明石 信廣 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 研究主幹 (40414239)
庄子 康 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60399988)
長坂 晶子 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 研究主幹 (70414266)
長坂 有 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 主査 (80414267)
佐藤 重穂 国立研究開発法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (10353707)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 保残伐 / 生態系サービス / 人工林 / 長期実験 |
研究実績の概要 |
日本では多くの人工林が主伐期を迎え、国産材の有効活用を図るために木材生産と生物多様性を両立させる伐採方法の開発が必要になっている。近年、木材生産と生物多様性を両立させる施業方法として保残伐が世界的に導入されている。この保残伐を人工林に適用するための世界初の大規模実証実験をトドマツ人工林で行っている。本研究ではこの長期実験のうち、伐採による変化が最も顕著に現れる伐採前後の5年間において、保残伐による生態系サービス(水土保全サービス、虫害抑制サービス、山菜の供給サービス)の変化を明らかにする。 当年度は、第2セットの8林分の伐採後1年目の調査を行った。水土保全サービスについては伐採後の冬期に伐採前の2倍程度の高いNO3-N濃度が観測された。伐採流域と対照流域の流出率を算出したところ,皆伐流域で1.7倍,中量保残流域で1.5倍,大量保残流域では1.3倍と増加しており,増加率は保残の傾度と対応していた。虫害抑制サービスについては、伐採後の調査区に鱗翅目幼虫を模した粘土製のダミーイモムシを設置したところ、鳥類による捕食率と保残処理との関係は明瞭ではなく,昨年と今年で一貫性はなかった。トドマツオオアブラムシについてはトドマツ鉢植えを用いた放飼実験を行った。随伴アリは皆伐区でトビイロケアリ、天然林ではハラクシケアリが多く、保残伐区では両種が混在していた。アブラムシの個体数は昨年同様、トビイロケアリ随伴木、シワクシケアリ随伴木、随伴アリ不在木の順に多く、随伴アリによる違いがみられた。山菜の供給サービスについては、赤外線センサーカメラを用いて山菜採り利用者数の計測を行った結果、実験区を含む流域には5~7月の間に約1500台の車が山菜採り目的で出入りしており、この数は2年間変わらず安定していた。実験区の山菜の生育状況は、伐採翌年にウドの高さ1.5m以下の個体とタラノキの実生が多数発生した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に従って第2セットの8林分の伐採後1年目の調査を完了したため。ただし、雇用したポスドクが不測の病気により入院したため、その間の野外調査は1年後に行うことになった。
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今後の研究の推進方策 |
第3セットの伐採後1年目の調査をH28に予定していたが、伐採とその後の植栽にH29の春までかかるため調査が1年間遅れることになった。第1~3セットの全てにおいて伐採前調査は予定通り行うが、伐採後の調査は1年ずつずれることになる。この計画でも研究期間中に伐採後3年目までの経過を調査できるため、研究目的上の問題はない。 トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験に関する協定に基づく協議会とワーキンググループを開催し、研究者、森林管理者間で研究の推進に関する調整を行った。
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