研究実績の概要 |
九州国立博物館で撮影されるCTデータの解像度は低く、通常木材の樹種を特定するために必要とされる解剖学的な特徴を観察することはできない。しかし、CT画像にはそれぞれの組織構造に基づく特徴、いわば「木目調」が現れており、これを画像認識することで樹種を自動判定できる可能性があった。そのために画像のデータベースを作成し、それを計算機に機械学習させるシステムの構築に着手した。 樹種判定の対象は日本において主要な彫像用材である10種類の木材とし、博物館の装置で得られる最高解像度で木材の3次元データを蓄積した。具体的には、1樹種から40枚(画像サイズ300x300ピクセル、ピクセル解像度50μm)の木口断面を作成し、データベースとした。画像分解能は6段階(0.05, 0.1, 0.15, 0.2, 0.25 mm/pixel)に変化させ、画像の階調(グレースケール)を5段階(256, 128, 64, 32, 16, 8、28ビットから23ビット)、画像の関心領域を3段階(実木材の1.5 × 1.5, 1 × 1, 0.5 × 0.5 cmの領域に相当)として、合計90種類の画像データベースを準備した。 グレーレベル同時生起行列から計算するHaralickパラメーターを用いて、木彫用木材データベース間でLeave-one-out kNN法による自動認識を行った。その結果、16階調以上、0.15mm分解能で1センチ四方以上の領域の情報が与えられれば、98%以上の正答率で樹種が正しく認識されることが明らかになった。ただし、その際、触感や目視では間違えにくいキリとケヤキが予想に反して誤認識される場合があった。特に年輪の狭いキリと広いケヤキの場合、画像テクスチャー的には類似していることが原因であった。
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