研究課題/領域番号 |
25252035
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中嶋 正道 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20192221)
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研究分担者 |
阪本 憲司 福山大学, 生命工学部, 准教授 (00309634)
酒井 義文 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10277361)
平井 俊朗 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (30238331)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / クローンギンブナ / ヤマメ / 遺伝子発現 / 福島県 |
研究概要 |
昨年度の研究実施内容は以下のとおりである。 1)ギンブナにおける被曝実験:クローンギンブナを用いて100Bq/kg、1000Bq/kg、10000Bq/kgの放射性セシウム(137Cs)を含む餌を与え成長、血液性状、遺伝子発現、環境適応能力の変化を調べた。今年度は3か月飼育区と6か月飼育区の2種類の飼育期間の比較を行った。その結果、3か月飼育区では10000Bq/kg区はコントロールとほぼ同じ環境適応能力を示したが、100Bq/kg区と1000Bq/kg区はコントロールよりも優位に適応能力が低下していた。6か月飼育区では10000Bq/kg区とコントロール区の比較を行った。3か月区と同様に両試験区で環境適応能力の差は観察されなかった。 2)天然ヤマメの放射能汚染状況調査と遺伝的影響調査:福島県内の河川、阿武隈川、請戸川、真野川とコントロールとして宮城県仙台市の広瀬川よりヤマメを採集し、放射能汚染状況、血液性状、遺伝子発現状況を調べた。福島県内の河川で採集されたヤマメは広瀬川で採集されたヤマメに比べ高い放射線が検出された。特に請戸川で採集されたヤマメの放射性セシウム量は最大5070Bq/kgとかなり高い値が検出された。河川底泥はさらに高い値を示し最大19000Bq/kgの放射性セシウムが検出された。原発事故以降2年以上が経過しても汚染が継続していることが明らかになった。サブトラクション法を用い阿武隈川と北海道石狩川、見市川のヤマメで発現量に差のある遺伝子を検出し、阿武隈川、請戸川、真野川、広瀬川間で比較を行った。その結果、Polyubiquitinが福島県内の河川で発現量上昇傾向が、C1-inhibitorとEBI-3で低下傾向が観察された。これらの遺伝子は免疫系に関与する遺伝子であることから、長期間の放射線被曝が生体防御に関与する遺伝子の発現に影響を与える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究計画はおおむね計画通りに進展しているといえる。しかし、一部天候などの影響で実施できなかった項目があり、これらについては今年度実施予定である。昨年度実施予定の項目とその進展具合について以下に記す。 1)クローンギンブナの被曝実験:100Bq/kg、1000Bq/kg、10000Bq/kgの3実験区を設定したが、100Bq/kg区と1000Bq/kg区で飼育中に大量死が発生してしまい、100Bq/kg区はほぼ全滅、1000Bq/kg区は約半分となってしまった。そのため、予定していた1年半飼育区における1000Bq/kg区と100Bq/kg区のサンプルを得ることができなくなった。 2)天然ヤマメ・サクラマスの被ばく状況および遺伝子発現状況調査:計画していた実験、調査内容はほぼ計画通りに進行中である。 3)天然サクラマスの放射線被曝による遺伝的影響調査:真野川のはやま湖に生息する湖沼性サクラマスから染色体操作により全ホモ個体を作成し、放射線被曝による遺伝的影響の定量を計画していたが台風による出水により遡上時期である9月下旬から10月上旬にかけて川に入ることができず、親魚を得ることができなかった。今年度再度親魚を得るためのサンプル採集を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の研究を実施する予定である。 1)クローンギンブナの被曝実験:今年度は8月に1年被曝区、2月に1年半被曝区からサンプルを採集する予定である。100Bq/kg区のサンプリングは大量死が生じたために中止し、1000Bq/kg区も1年被曝区のみのサンプリングを行う。調査内容は昨年度と同じで、血液性状、遺伝子発現状況、環境適応能力の評価を行う。 2)天然ヤマメ・サクラマスの被ばく状況および遺伝子発現状況調査:昨年度は計画していた実験、調査内容がほぼ計画通りに進行中した。今年度も同様の河川で同様の調査、実験を継続する予定である。しかし、コントロールとする河川が宮城県の広瀬川のみであることから秋田県阿仁川のヤマメをコントロールとして加えることを検討している。 3)天然サクラマスの放射線被曝による遺伝的影響調査:昨年度台風の影響でできなかった項目である。今年度は状況が許す限り現場に滞在し、採卵用新魚の捕獲に尽力したいと考えている。
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