研究課題/領域番号 |
25252036
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
良永 知義 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (20345185)
|
研究分担者 |
兼松 正衛 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (80443373)
|
研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
|
キーワード | 水産増殖 / 干潟 / アサリ / 病害虫 |
研究概要 |
①環境因子特に塩分濃度がアサリ体内での栄養体の増殖に及ぼす影響の把握、②感染がアサリの生理に及ぼす影響の実験的把握、③低レベル攻撃がアサリに及ぼす影響④感染実験による初期稚貝への影響把握、⑤アサリが死亡した環境(砂中あるいは水中)での前遊走子形成能の比較⑥感染強度の異なる海域(有明海定点、海の公園、六条潟)での感染状況・個体群動態の比較を計画した。以下にそれぞれの項目の実施状況を記す。 ①では、通常アサリが生息する塩分15以上の環境では塩分は栄養体の増殖に影響せず、このことより、六条潟などの河口海域で感染強度が低い理由としては低塩以外の要因が関与していることが示唆された。②実験感染により、感染は生残以外に成長、潜砂、ろ水に影響を及ぼすことが明らかとなった。③低レベル感染した個体においても、感染強度は徐々に増加したことから、低レベル感染個体が自然治癒する可能性は極めて低いことが示された。④初期稚貝の感染実験は実施したものの、初期稚貝の飼育に不慣れなこともあり、十分なデータを得られなかった。⑤定量的な把握には至らなかったが、砂上あるい水中においた感染アサリのどちらでも前遊走子が形成された。⑥感染強度の異なる3海域での感染状況・個体群モニタリングを継続して行った。その結果は、平成24年度までの調査結果と基本的には同じであった。 平成26年度以降の研究の準備として、アサリ未感染種苗が7万個体用意できた。また、平成26年度以降の調査のための基礎的データとして、愛知県三河湾内全域の感染強度を把握するとともに、有明海の覆砂アサリ感染漁場での感染強度を把握した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海域によって感染強度が異なる要因を、野外調査、室内・戸外実験、モデル実験によって明らかにすることによって、パーキンサスが存在する海域でも可能なアサリ資源増殖・回復策を立案することを目的としている。 河口海域で一般に感染強度が低い原因として、低塩分環境が想定されていたが、本年の研究で、低塩分の影響はほぼ否定できた。今後は、河口海域でしばしば発生する大量出水や青潮による感染個体群の消失の感染強度の関与の把握にむけての研究を進展させることになる。そのために今年度いくつかの実験を実施したが、そのうち、初期稚貝への感染実験、前遊走子生成の環境の影響を把握する実験を除いて、ほぼ予定通りに進んでいる。また、これらの遅れている実験も本年度の経験から平成26年度に速やかに実施できると予想される。感染強度の異なる海域での調査も順調に継続されている。さらに、予定していなかった研究であるが、覆砂漁場での予備調査を行うことができた。覆砂による漁場造成はアサリの増殖に一定の効果があることが知られている。この漁場では平成26年度に新たに覆砂が計画されている。覆砂漁場における個体群動態ならびに感染強度の推移を調査することにより、感染強度を決定する要因について大きな手掛かりが得られると期待される。 以上の成果より、部分的には若干の遅れがあるものの、覆砂漁場の研究フィールド化とう予定外の研究の進展もあり、全体として、おおむね順調に進展していると自己評価する
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、パーキンサスの感染強度を決定する要因を解明し、その結果にもとづいてパーキンサスの影響を受けにくいアサリ増殖手法を立案・提示するため、以下の⑥項目について研究を実施する予定である。①野外調査によるパーキンサスの感染強度決定要因の推定、②パーキンサスの各発育段階の増殖・生残に低塩分環境が与える影響の実験的把握 ③感染実験による初期発育段階のアサリに対するパーキンサスの感染能と病害性の把握、 ④異なるサイズのアサリおよび異なる地域のアサリのパーキンサス感染への耐性の実験的把握、⑤ 戸外試験による感染の伝搬様式の把握と低塩環境が感染伝搬に与える影響の把握、⑥塩田跡地および大型戸外水槽をモデルとして用いたアサリ増殖・中間育成のためのモデル試験 基本的には計画どおり実施する予定であるが、④については、異なる地域に由来する未感染アサリ種苗が困難であり、また、これまでの感染実験で感染強度の高い大分県産人工種苗ならびに感染強度が極めて低い六条潟天然種苗のどちらでも感染が成立したことから、種苗の由来の違いは感染成立に大きな影響を与えないと推察されることから、④を目的とした実験は実施しないこととする。また、①に関連して、本年度、これまでの有明海定点近傍に調査実施可能な覆砂漁場を確保したことから、この覆砂漁場でも定期調査を行うこととする。
|