前年度までの研究を引き継ぎ、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化誘導物質の探索を継続した。生物活性スクリーニングにおいて顕著な活性を示した、大島新曽根産未同定種カイメンS14-336の抽出物を二層分配に付した後に、各画分の分化誘導活性を調べたところ、クロロホルム画分に活性が認められた。この画分をODSフラッシュクロマトグラフィーで水とメタノールの混合溶媒を用いて溶出させ、もっとも強い活性を示す100%メタノール溶出物を得た。これをセファデックスLH-20を用いるゲルろ過に付たところ、分化誘導活性物質が4つのピークとしてカラムから溶出した。各活性ピークをODS-HPLCを用いてさらに精製を進めた。どの画分についても、HPLCのピークと活性の間に相関が認めるまでに純度を上げることができなかった。なお、活性を示した画分の1つについて、NMRデータを測定したところ、テルペンあるいはステロイドが主成分であることが判明したが、構造決定には至らなかった。 動脈硬化の要因として、泡沫化したマクロファージの血管内壁への沈着が挙げられている。そこで、マクロファージ泡沫化阻害物質の探索を行った。ヒト由来単球をマクロファージに分化させ、この細胞における脂質の蓄積阻害を指標とした。マクロファージ培養に際して添加する脂質の精製条件等を検討し、アッセイ系の安定化に成功した。カイメンの抽出物について活性スクリーニングを行ったが、顕著な活性を検出するには至らなかった。
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