研究課題
一酸化炭素資化菌は、環境中の一酸化炭素 (CO) をCOデヒドロゲナーゼ (CODH) により除去し水素を生成するため環境の代謝活性を促進する「潤滑油」として機能すると考えられる。そこで本菌の特性を分子生物学的手法により総合的に理解し、C1化学への展開に向けた持続的低炭素社会の基盤を構築することを目的とする。本年度の研究成果は、以下の通りである。1) 新規CO資化分離株Carboxydocella属細菌の詳細なゲノム解析を行い、本菌が6つのCODH遺伝子を保有することを明らかにした。その内1つは呼吸鎖複合体Iの分子シャペロン遺伝子とクラスターを形成する新規なCODH遺伝子であり、本CODHは酸化的リン酸化によるエネルギー保存と共役する新規代謝経路を担うことが推察された。2) 公開されている3,767の微生物ゲノムに対して新規CODH遺伝子クラスターの探索を試みた。144の微生物ゲノム上に204個のCODH遺伝子クラスターが認められ、その中には、昨年度報告した新規CODH遺伝子クラスターは含まれなかった。新たにThermodesulfatator indicusにおいてピルビン酸合成を介したCO2固定と共役すると推察される新規CODH遺伝子クラスターを見出した。3) Carboxydothermus pertinax Ug1株の詳細なトランスクリプトーム解析によりCO資化時に特有な代謝を示した。本菌は特異なCO代謝を有し、遺伝子クラスター単位で有意に転写制御を行い、CO資化と共役する水素生成経路及びTCA回路の還元的利用による炭素固定や呼吸鎖に依存しないエネルギー保存を行うことが示唆された。4) 前年度の結果よりCO代謝の卓越が推測された熱水地点の微生物群集構造を解析し比較した。優占種が変化しつつもCO資化能を有するとされる微生物が一定量存在し、環境の微生物生態系を支えることが示唆された。また、同環境からCO100%雰囲気下で多数の集積培養系の構築に成功しており、今後の新規CO資化性菌の発見が期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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FEMS Microbiol. Ecol.
巻: 91 ページ: 1-9
10.1093/femsec/fiv093
http://www.microbiology.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/