研究課題/領域番号 |
25252042
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石黒 宗秀 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00294439)
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研究分担者 |
柏木 淳一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40241369)
佐藤 努 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10313636)
小林 幹佳 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (20400179)
北川 巌 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (30462360)
鈴木 克拓 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90354068)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リン酸 / 分散凝集 / 沈殿 / 電解質濃度 / フェラルソル / 溶存炭素濃度 / 二酸化炭素 / 黒ぼく土 |
研究実績の概要 |
リン酸が土壌の分散凝集に及ぼす影響を明らかにし,土壌侵食抑制のための方策を検討するために,熱帯に広く分布するフェラルソルを用いて実験を行った。昨年度は,Na溶液中でのpHと電解質濃度の影響を明らかにしたが,本年度は,実際の農地に存在するCa溶液中での分散凝集特性を測定し,Na溶液との比較を行った。良く知られているように,Ca溶液中では,Na溶液中よりも凝集しやすいことを示した。しかし,電解質添加量が更に大きくなると,Na溶液中では凝集しやすくなったのに対し,Ca溶液中では高pHにおいて,一度凝集的な傾向を示したものの,更に添加量が増えると,土粒子が分散しやすくなることを明らかにした。これは,Caおよびリン酸が沈殿を形成し,電解質濃度が低下してかつリン酸が吸着するため,土粒子間の電気的反発力が増大したためと考えられる。Caとリン酸の大量施肥は,土壌侵食しやすい条件を招く可能性があるため,配慮を要することがわかった。 土壌中の溶存炭素は,炭素循環や二酸化炭素の発生に影響すると指摘されている。ここでは,pHおよびカチオン種を変えることにより,溶存炭素濃度と二酸化炭素放出量にどのような影響を及ぼすかを明らかにするため,黒ぼく土裸地において現地測定を行った。pHを7にしたNa型の土壌では,溶存炭素濃度が,pH7のCa型土壌およびpH約5.5の自然状態の土壌のそれに比べて明らかに大きくなった。しかし,二酸化炭素放出量は,3条件で差が認められなかった。Na型の高pH条件での溶存炭素は,ほとんどが腐植物質であるため,分解が進まず,二酸化炭素の増大に結びつかなかったと考えられる。溶存炭素の構成物質によって,二酸化炭素放出への影響が異なると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ca型土壌において,リン酸とCaを多量に添加すると,一度凝集的になった土壌が分散的になることを明らかにし,進捗が見られた。また,溶存炭素濃度と二酸化炭素放出量に正の相関が見られることが一般的に指摘されているが,溶存炭素濃度が顕著に増大しても,二酸化炭素放出量に影響しない場合があることを明らかにし,進展が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸添加によるフェラルソル土壌の凝集分散を実験と理論から明らかにしたが,土壌を構成する粘土鉱物の影響の詳細を明らかにして行きたい。溶存炭素濃度と二酸化炭素放出量の関係を,実験室でコントロールされた条件において詳細に調べていく。水環境中で分解されやすいとされるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの,土壌中における分解浄化可能性を検討する。福島第一原発事故の事故現場周辺で問題が指摘されている,放射性Srの,粘土鉱物への吸着の強さを明らかにする予定である。
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