研究実績の概要 |
水稲の存在する稲下と水稲の存在しない株間のそれぞれにおいて土中CH4、CO2濃度とその安定同位体比の測定を行った。株間においては土中のCH4が濃度勾配によって田面水中へ移動していることがわかった。また株間においては酢酸還元反応、炭酸還元反応、メタン酸化反応の3つの反応が起こっていた。稲下土壌においては酢酸還元反応とメタン酸化反応が起こっていた。生成されたCH4は水稲根圏、特に根の先端付近にて酸化されCO2を生成した。中干期、落水後では株間、稲下ともにメタン酸化反応が発生していた。中干期においてはO2が大量に土中に取り込まれたために湛水期と比較して多くのCO2が生成された。落水後においては土壌中に存在するCH4、または基質となる有機物が存在しなかったために中干期ほど活発にメタン酸化反応が起こらなかった。 湛水区と複合区の両処理区において, 地表面から10 cmと地表面から30 cmの深度の土壌試料をそれぞれ10 gずつ採取した. 採取地点は両処理区に設置した白金電極から20 cm離れた株間とした. 試料採取には検土杖を用いた. 土壌試料採取後, DNAの抽出を行った。土壌抽出DNAを鋳型とし, 硝化反応の第1段階に関わるアンモニア酸化酵素遺伝子amoA, 脱窒反応の第3段階に関わる亜硝酸還元酵素遺伝子nirS, nirK, および第4段階に関わる亜酸化窒素還元酵素nosZ, を標的とするプライマーであるamoA-1F/amoA-2R(amoA), cd3aF/R3cd(nirS), fraCu/R3cu(nirK), nosZ-F/nosZ1622R(nosZ) を用いてPCR反応を行った.水田の水管理が土壌の微生物群集を変化させる可能性があることが示唆された. また水管理の影響は30 cmの深度にはおよびにくいと考えられた. その理由として水管理が深度30 cmの酸化還元電位に影響がおよびにくいことが考えられた.
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