研究課題
骨髄由来サプレッサー細胞(MSDC)は癌の増殖に伴って誘導される、未分化な細胞集団であり、炎症を“抑える”因子として注目されている。しかし、その性状は明らかにされていない。申請者は癌の増殖によって誘導されるMDSCが、炎症性脂質メデイエーター(ILM)を産生することで、癌の悪性度を制御しているという知見を得た。本研究では“ILMシグナルを軸としたMDSCsの免疫調節機構を解明し、癌の増殖や転移の抑制に応用する基盤技術の創出を目指すこと”を目的に、平成25年度は以下の項目について研究を行った。① ILM産生MDSCの特定と癌に与える影響の検討:MDSCには単球系と顆粒球系の2つが存在する。本項目ではまずILM KOマウス用いて、MDSCから産生されるILMがa)癌の増殖・転移と薬物感受性、b)原発・転移の両巣における免疫反応に与える影響を解析した。② 癌原発巣においてはILMを発現する単球系MDSCが多く浸潤すること、この欠損が血管新生を促進して癌の増殖を加速させることを明らかにした。③ 癌の転移巣において顆粒球系MDSCが多く浸潤しており、この細胞がILMを発現していること、それを欠損すると癌の転移が抑えられることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
ILMがMDSCの生理活性を制御することで癌の増殖や転移に影響をあたえているという当初の仮説をサポートするデータを得ることができた。それに加えて、新しい癌の標識方法の確立に成功することができ、予定していなかった新たな証拠となる実験データを得ることにも成功した。
今後ILMがMDSCの生理活性をどのように制御しているのか、その機構を明らかにするとともに、癌の増殖や転移の治療への応用を見据えた検討を進めていく。
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