研究課題/領域番号 |
25252049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 幸久 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40422365)
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研究分担者 |
有竹 浩介 筑波大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70390804)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 薬理学 / 免疫学 / がん / プロスタグランジン |
研究実績の概要 |
本研究では“PGD2シグナルを軸としたMDSCの免疫調節機構を解明し、癌の増殖や転移の抑制に応用する基盤技術の創出”を目指す。平成27年度は以下の項目について研究を行った。① PGD2産生MDSCが癌に与える影響の検討:MDSCから産生されるPGD2が癌の微小環境における炎症反応を制御することを遺伝子欠損マウスを用いて証明した。また、PGD2の有無が抗がん剤感受性にも影響を及ぼすことを明らかにした。② MDSCから産生されるPGD2が癌の増殖を抑制する機構の解明:増殖するがん組織には、単球系のMDSCの浸潤が多く観察されることを明らかにした。③ MDSCから産生されるPGD2が癌の転移に与える影響の解明:転移刺激に反応して組織にMDSCの浸潤が観察されることや、浸潤してきたMDSCからPGD2の産生が観察されることを確認した。④ バイオインフォマティクスを用いたMDSC サブタイプの新規分類と性状予測:癌の原発巣と転移巣から単離したMDSCを対象に、プロテオーム解析を進め、表面抗原解析や産生脂質の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況を各項目別にみると。 ① PGD2産生MDSCが癌に与える影響の検討、② MDSCから産生されるPGD2が癌の増殖を抑制する機構の解明、④ バイオインフォマティクスを用いたMDSC サブタイプの新規分類と性状予測 それぞれの項目についてはほぼすべての実験を遂行することができ、有益な成果を得らることができた。。③ MDSCから産生されるPGD2が癌の転移に与える影響の解明については、実験は遂行できたものの、癌原発巣と転移巣での有意な差を見出すにはまだ至っておらず当初の仮説とは若干違った成果を得るに至った状況にある。今後実験手法を変更するなどして新たな成果を得ていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では“PGD2シグナルを軸としたMDSCの免疫調節機構を解明し、がんの増殖や転移の抑制に応用する基盤技術の創出を目指すこと”を目的に、今後以下の項目について研究を行う。①これまでにMDSCから産生されるPGD2ががんの微小環境の炎症に影響を与え、発がんやがんの増殖、転移の効率を変化させることを明らかにしてきた。今後は、これらががんの薬剤感受性に与える影響の評価とその機構解明を行っていく。②単球系のMDSC由来のPGD2ががんの血管透過性や新生に影響を与えることを明らかにしてきた。今後この影響を仲介する受容体シグナルを明らかにするとともに、その治療応用に挑戦する。③顆粒球系MDSC由来のPGD2ががん転移に影響を与えることを明らかにしている。今後、受容体シグナルを含めた機構解明を行い、治療応用に挑戦する。④がん増殖原発巣や転移巣、薬剤耐性がんから単離したMDSCの生理活性がなぜ変化するかについての解明を行っていく。平成28年度は本研究の最終年度であるため、各項目についてまとめ、報告していく。
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