研究実績の概要 |
平成26年度は、以下の解析を行った。 1. "JHフリー"のカイコの解析: JHAMTとCYP15C1遺伝子のダブルミュータントカイコについて、表現型解析を完了させた。2. JH受容体ノックアウトカイコの解析: Met1, Met2シングルノックアウト、およびダブルノックアウトカイコの表現型解析を完了させた。3. カイコの遺伝的モザイク系統を利用してMet1のモザイク解析を行った。4. 以上の結果から、幼若ホルモンが機能しないカイコにおいても、基本的に蛹への変態は3齢になるまで起こらないことを実験的に証明することができた。5. "competence"獲得メカニズムの解析: 1, 2齢のカイコが蛹変態できない理由を明らかにするために、種々のノックアウトカイコにおける遺伝子発現解析を行った。その結果、蛹化の鍵遺伝子であるbroadが、JHが無い状態にも関わらず、若齢では発現の上昇が見られないことが判明した。さらに、broadのモザイク解析を行い、broadが真皮細胞の蛹化に必須であることを明らかにした。以上の結果から、カイコの若齢期においては、broadの誘導に必要な条件が満たされないために、蛹変態が起きないことが推定された。おそらく、カイコには蛹に変態するための能力を与える因子("competence factor")が存在し、その効果は3齢期以降でないと表れないものと考えられる。6. 幼虫・蛹化・成虫化のマスター遺伝子の解析:幼虫形質維持・蛹化・成虫化の鍵遺伝子としてそれぞれkr-h1, broad, E93が提案されている。ゲノム編集法を用いた解析により、カイコの真皮細胞においてもこれらの遺伝子は幼虫形質維持・蛹化・成虫化に必須であることを明らかにした。これらの遺伝子のモザイク個体は致死性が極めて高く、ノックアウト系統を得ることが困難であったが、適切な条件を見いだすことで、ノックアウト系統の樹立に成功した。
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