研究課題
ネムリユスリカPv11細胞でのゲノム編集技術を開発している。Cas9-RFP陽性細胞がわずかながら単離できたが、in-delを捉えるまでは至っていない。理由として考えられるのは、ネムリユスリカが極めて高いATリッチなcodon usageをもつ遺伝子構造を持つことが原因と思われる。そこで、GC含量が高めな一般に真核生物用に最適されたCas9遺伝子ではなく、ATリッチなバクテリア用のCas9遺伝子を用いたCRISPRシステムを試作中である。発現ベクターとして用いているpol II 及びpol IIIタイプのプロモーターは、ネムリユスリカゲノムに由来し、その機能を確認済みで有る。(カイコやショウジョウバエのプロモーターは機能しない)従って、Cas9の発現不良は転写ではなく、やはり翻訳効率の低さが原因であろう。世界で唯一ネムリユスリカを扱っているラボが我々であるため、他者の研究成果を宛にできない弊害がある。非モデル生物ならではの問題で有り、ある意味想定内であるが、早急に解決したい。わずかながらの陽性細胞をセルソーターで分取することには成功しているので、この細胞がCas9安定発現細胞として樹立可能か、現在でも培養を継続中である。この細胞樹立は、今後のネムリユスリカのゲノム編集技術開発のブレークスルーとなると期待している。
3: やや遅れている
実績概要に記載したように、実際のin-del変異を捉えるに至っていない。非モデル生物でのゲノム編集技術確立には、困難な問題に直面することは想定済みだが、計画を遂行するためには早々に実験系の確立を急がなければならない。Cas9ヌクレアーゼやガイドRNAの発現は確認できているので、後はそれらの発現効率を上げることが課題である事を理解して、実験を進めている。
Pv11細胞での遺伝子発現効率を上げるようなネムリユスリカ内在性の強力なプロモーターを選抜し、発現ベクターを構築する。また、幼虫個体での異所的発現を用いたゲノム編集技術の確立も目指す。
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