研究課題
本研究は、乾燥耐性の分子機構を解明するために、ネムリユスリカの培養細胞であるPv11で作動可能なゲノム編集技術を開発することを第一目標とした。昨年度までは、Pv11細胞でのCas9タンパク質の発現がほとんど認められなかった。これは市販されている昆虫用発現ベクターがチョウ目昆虫に感染するウィルスに由来するプロモーターを利用しているため、ハエ目昆虫であるネムリユスリカで十分に機能していないためであると考えた。そこで、今年度は、Pv11細胞で機能しうる発現ベクターの構築から行うことにした。トランスクリプトーム解析から乾燥誘導性の遺伝子(PvGapdh)を同定し、そのプロモーターを組み込んだ発現ベクターを独自に構築した。pPGKと命名したこのベクターを用いる事で、Pv11細胞にGFPを安定的に発現させることが可能となった。この安定発現細胞をPv11-KHと命名した。このGFP発現をマーカーに、遺伝子ノックダウン及びノックアウトの実験系構築を進めた。GFP遺伝子に対するsiRNAをPv11-KH細胞に導入すると、極めて効率良くノックダウンができた。具体的には、タンパク質レベルで7.5%程度までGFPの発現量を低下させることに成功した。発現ベクターの構築は、Pv11細胞でのCas9タンパク質の発現も可能にした。Cas9を発現させたPv11-KH細胞に、GFP遺伝子をターゲットとしたガイドRNAを導入すると、GFPの発現を消失させることができた。蛍光を消失した細胞を集めてGFP遺伝子の配列を確認したところ、その遺伝子に欠失・挿入変異が生じていた。以上のことから、ネムリユスリカに特化したCRISPR/Casシステムが確立できたと結論づけた。今後は、CRISPR及びRNAiシステムを利用し、乾燥耐性をもたらす責任遺伝子の大規模スクリーニングを展開していく予定ある。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 7件)
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