研究課題
基盤研究(A)
タンパク質アルギニンメチル化は、S-adenosyl-L-methionine(SAM)をメチル基供与体として、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素(protein arginine methyltransferase:PRMT)によって 触媒される反応であり、転写制御やRNA プロセシング、シグナル伝達、DNA 修復など多岐に渡る細胞機能を制御することが知られている。ヒトでは9つのタンパク質アルギニンメチル基転移酵素が同定されており、中でもPRMT1 は細胞内アルギニンメチル化反応の85%を担っている酵素である。我々は最近、内皮細胞の PRMT1 を発現抑制すると管腔形成が著しく促進するという重要な現象を見出した。現在、PRMT の内皮細胞機能に対する生理的意義については不明であるため、本研究は、PRMT と栄養補給路の機能的ネットワークの解明を目指す。平成25年度は、PRMT の細胞特異的なネットワーク機能の解明に向け、内皮細胞特異的 PRMT1 ノックアウトマウスの作製を進め、PRMT1-flox マウスの作出に成功した。また、血管内皮細胞特異的に Cre 組換え酵素を発現する Tie2-Creマウスを導入し、PRMT1-flox マウスと交配を行うことで、解析対象である内皮特異的 PRMT1 ノックアウトマウスの作出に着手した。これまでに、ヘテロに内皮 PRMT1 を欠損するマウスは胎生致死ではないことが判明している。
2: おおむね順調に進展している
栄養補給路におけるPRMTの機能解析において、組織特異的なPRMT1遺伝子の欠損が重要であると考え、内皮細胞特異的ノックアウトマウスの作製を進め、内皮PRMT1のヘテロ欠損マウスは胎生致死ではないことを明らかとした。現在、ホモにて内皮PRMT1を欠損するマウスの作出を試みるとともに、胎生期からの内皮PRMT1ホモ欠損マウスが致死である可能性も考え、誘導型の内皮PRMT1欠損マウスの作出に着手している。これらマウスは、栄養補給路としての血管組織におけるPRMT1の機能を個体レベルで直接解明する突破口となるものと考えている。
昨年度の結果を受け、本年度は、内皮細胞特異的PRMT1欠損マウスの作出を推進する。また、内皮細胞内でのPRMTファミリーの役割を解明するため、血管内皮細胞内のPRMTファミリーであるPRMT1~8の遺伝子発現を検討し、各PRMTのノックダウンによる管腔形成への影響を評価する。得られた情報を元に、PRMTの相互作用因子の探索を試み、メチル化修飾と機能変化について検討することで、栄養補給路制御の分子基盤の解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
PLoS One
巻: 8 ページ: ━
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