アルギニンメチル化酵素と栄養補給路の機能的ネットワークの解明

2015 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25252062
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 深水 昭吉 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60199172)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 栄養補給路 / PRMT1 / 内皮細胞特異的ノックアウトマウス

研究実績の概要

PRMT1 は、細胞内のタンパク質アルギニンメチル化反応の約85％を担っている酵素であり、遺伝子欠損マウスが胎生致死を示すことから、発生を始めとする多彩な生命現象に深く関与していることが考えられる。我々は、培養内皮細胞で観察される管腔形成が、PRMT1の発現を抑制することによって著しく促進する現象を見出した。しかしながらアルギニンメチル化の血管内皮細胞における生理的意義は不明である。本研究では、内皮機能に対するPRMT1が担う役割の解明に向け、内皮細胞特異的 PRMT1ノックアウトマウスを作製し、タンパク質のアルギニンメチル化と栄養補給路の機能的ネットワークの解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PRMT1の遺伝子欠損マウスは早期に胎生致死を示すことから、栄養補給路におけるPRMT1の機能を知るためには、組織特異的なPRMT1の欠損が有効であると考え、内皮細胞特異的ノックアウトマウスを作製した。二光子イーメジング法により血管構造の解析を行った結果、PRMT1のホモ欠損マウスにて、胎生期の血管形成に異常が認められた。このことから、発生段階における栄養補給路でのPRMT1の重要性が初めて明らかとなった。

今後の研究の推進方策

平成２７度までの結果を受け、平成２８度は、内皮特異的なPRMT1のノックアウトマウスについて、血管の構造や機能に焦点を当て、内皮細胞におけるPRMT1の栄養補給路に対する生理的意義を検証する。さらに、本遺伝子改変マウスの生体内メチル化代謝の状態を調べることで、血管網構築に重要な内皮PRMT1のネットワーク機能の解明を試みる。

研究成果

• [雑誌論文] Severe Hypomyelination and Developmental Defects Are Caused in Mice Lacking Protein Arginine Methyltransferase 1 (PRMT1) in the Central Nervous System (2016)
  • 著者名/発表者名: Misuzu Hashimoto, Kazuya Murata, Junji Ishida, Akihiko Kanou, Yoshitoshi Kasuya and Akiyoshi Fukamizu
  • 雑誌名: The Journal of Biological Chemistry 巻: 291 ページ: 2237-2245
  • DOI: 10.1074/jbc.M115.684514
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Novel helical assembly in arginine methyltransferase 8 (2016)
  • 著者名/発表者名: Toma-Fukai S, Kim JD, Park KE, Kuwabara N, Shimizu N, Krayukuhina E, Uchiyama S, Fukamizu A, and Shimizu T
  • 雑誌名: Journal of Molecular Biology 巻: 428 ページ: 1197-1208
  • DOI: 10.1016/j.jmb.2016.02.007
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] PRMT8 as a phospholipase regulates Purkinje cell dendritic arborization and motor coordination (2015)
  • 著者名/発表者名: Kim JD, Park KE, Ishida J, Kako K, Hamada J, Kani S, Takeuchi M, Namiki K, Fukui H, Fukuhara S, Hibi M, Kobayashi M, Kanaho Y, Kasuya Y, Mochizuki N, and Fukamizu A
  • 雑誌名: Science Advances 巻: 1 ページ: e1500615
  • DOI: 10.1126/sciadv.1500615
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Erythropoiesis and blood pressure are regulated via AT1 receptor by distinctive pathways. (2015)
  • 著者名/発表者名: Kato H, Ishida J, Matsusaka T, Ishimaru T, Tanimoto K, Sugiyama F, Yagami K, Nangaku M, and Fukamizu A
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 10 ページ: e0129484
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0129484
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] アルギニンメチル基転移酵素 PRMT1 による心機能制御機構の解明 (2015)
  • 著者名/発表者名: 村田知弥、陸偉哲、橋本美涼、石田純治、深水昭吉
  • 学会等名: 第19回 日本心血管内分泌代謝学
  • 発表場所: 神戸国際会議場、兵庫県神戸市
  • 年月日: 2015-12-11
• [学会発表] 血管内皮タンパク質アルギニンメチル基転移酵素・PRMT1の機能解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 石丸友博、石田純治、金 俊達、仲島由佳、橋本美涼、水上早瀬、杉山文博、八神健一、深水昭吉
  • 学会等名: 第19回 日本心血管内分泌代謝学
  • 発表場所: 神戸国際会議場、兵庫県神戸市
  • 年月日: 2015-12-11
• [学会発表] 血管内皮におけるタンパク質アルギニンメチル基転移酵素・PRMT1の機能解析 (2015)
  • 著者名/発表者名: 石丸友博、石田純治、金 俊達、仲島由佳、橋本美涼、水上早瀬、杉山文博、八神健一、深水昭吉
  • 学会等名: 第51回高血圧関連疾患モデル学会
  • 発表場所: 千里ライフサイエンスセンター、大阪府豊中市
  • 年月日: 2015-10-31