研究課題
全身への酸素や栄養素を運ぶ血管は、栄養補給路として極めて重要である。アルギニンメチル化酵素・PRMT1 は、細胞内のタンパク質アルギニンメチル化反応の約85%を担う酵素であるが、遺伝子欠損マウスが早期に胎生致死を示すことから、生体内での機能はほとんど明らかにされていない。我々は、培養内皮細胞で観察される管腔形成がPRMT1の発現抑制によって著しく促進する現象を見出した。しかし、PRMT1の血管内皮細胞における生理的意義は不明である。栄養補給路でのPRMT1の機能を知るため、内皮細胞特異的にCre組換え酵素を発現するマウスと、PRMT1遺伝子の活性ドメインをloxP配列で挟み込んだfloxマウスとを交配することで、内皮細胞特異的PRMT1欠損マウス(PRMT1-ECKO)を樹立した。得られたPRMT1-ECKOマウスは胎生15日目までに致死になることが判明したため、薄切切片を用いて胎仔の胸部大動脈を観察したところ、コントロールマウスとPRMT1-ECKOとで大きな違いは認められなかった。この結果を踏まえ、空間的な広がりをもつ血管の高次構造を観察するため、組織透明化試薬と二光子顕微鏡を用いた3次元での構造評価システムを構築した。さらに、内皮細胞の可視化のため、Cre活性のレポーターマウスR26GRRとPRMT1-ECKOマウスを交配し、Cre酵素を発現している血管内皮細胞のみで赤色蛍光を発するマウスを新たに樹立し、in vivoでの形態を保った微細な血管構造を評価した。PRMT1-ECKOマウス頭部の血管を観察した結果、PRMT1-ECKOマウスではコントロールマウスと比較して血管の管腔径が拡大し、管腔も部分的に途切れた異常な形態であることが判明し、発生段階における栄養補給路でのPRMT1の重要性を初めて明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Biochemistry
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