研究課題
本研究においては、19世紀に発見された遺伝子の担体であり染色体の内部構造が現在に至るも解明されていない現状に鑑み、その最終的な解決を図ることを目的としている。申請者らはそのため、従来の染色体の構造解析研究では基本的には全てが電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などを用いたクロマチン繊維の可視化によるアプローチがとられていたところに注目し、それとはまったく別の新しいアプローチを採用することとした。すなわち、染色体内部の全ヌクレオソームの可視化・さらには3次元空間へマッピングすることから染色体の内部構造解析のわり出しを行う。そのため2014年度には染色体内のヌクレオソームの可視化のために収束イオンビーム/走査電子顕微鏡(FIB/SEM)および電顕トモグラフィー(STEM)法を用いた新しい種々の実験方法を検討し、さらに従来から進めてきたFIB/SEMトモグラフィーおよび構造化照明顕微鏡(SIM)を用いて染色体の内部構造に関する結果を取りまとめたところ、染色分体中央部のタンパク質の骨格をなす、クロモソームスキャッフォールドとよばれる構造が2重らせん構造を取っていることを明らかにし、論文投稿した。また、その為の染色体試料の作成には常温常圧下では液体状態である塩であるイオン液体を用いた。イオン液体は塩であることから高真空中でも揮発することがない。かつ塩であることから導電性でイオン電導度は10-5~10-2 Scm-1程度もの値が報告されている。さらに耐熱性が高く400度でも物性変化が少ないことが知られている。親水性のイオン液体を用いれば生物試料に対しても親和性が高いコーティング剤として利用可能であり、今後の研究に有用であることを明らかにした。またFIB/SEMの断面の画像に見られる白斑はヌクレオソームと考えられるがその実験的再現性を得ることに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定した、染色体を対象とした収束イオンビーム/走査電子顕微鏡(FIB/SEM)トモグラフィー法の条件検討やイオン液体を用いた染色体標本作成法の条件検討に加えて、染色分体の中軸をなすタンパク質からなる染色体スキャッフォールドが互いによじれた2重らせん構造をとることをFIB/SEMトモグラフィー法と構造化照明顕微鏡(SIM)を用いて明らかにすることができ、論文として投稿した。さらにヌクレオソーム構造とみられる構造体を再現性よく実験的に確認した。
当初の計画通りに本研究課題を進める。新しい要素としてユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに設置されたFIB/ヘリウムイオン顕微鏡(FIB/HIM)の組み合わせユニットと同等の能力を発揮できるユニットの組み合わせを産総研とともに検討し、再現されたヌクレオソームの可視化を更に進める。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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