研究課題/領域番号 |
25252065
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)
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研究分担者 |
知花 博治 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (30333488)
川本 進 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (80125921)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | 一酸化窒素 / 酵母 / シグナル伝達 / 酸化ストレス耐性 |
研究実績の概要 |
1)NOの生成機構の解析:Tah18とDre2それぞれにタグを融合した共過剰発現株を作製し、プルダウン後のウェスタン解析により、高温や過酸化水素処理後のTah18-Dre2複合体の割合を非ストレス下のものと比較した。その結果、高温や過酸化水素処理後5分でTah18-Dre2複合体の割合が低下し、過酸化水素処理1時間でその割合はさらに減少した。この結果は「非ストレス下ではDre2はTah18と相互作用することでTah18依存的なNO合成酵素(NOS)活性を抑制しているが、ストレスに応答したTah18-Dre2複合体の解離によって遊離したTah18がNOS活性に寄与する」という仮説を支持している。
2)NOの生理的役割の解析:過酸化水素存在下では、Tah18タンパク質の過剰発現によって合成されるNOがアポトーシス様の細胞死を誘導していることが強く示唆された。
3)病原真菌におけるNOの生成機構・生理的役割の解析と病原性への寄与の検証:Candida glabrataにおいて、TAH18の発現抑制株と野生型株をマウスマクロファージに貪食させたところ、発現抑制株の方がマクロファージ内での増殖率は高かった。また、Aspergillus fumigatusにおけるMpr1の機能解析のために、mpr1遺伝子破壊株および高発現株を作製して調べたところ、mpr1遺伝子破壊株はプロリンアナログ(AZC)に対する感受性が観察されたことから、Mpr1がAZCアセチルトランスフェラーゼとしての機能を有することが推測された。一方、これらの株は高温や酸化などのストレスに対して、野生型株と変わらない表現型を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、NOの生成機構について我々の仮説を支持する結果を得ることができた。ストレス下では遊離したTah18依存的に細胞保護に必要なレベルのNOが合成されるが、非ストレス下ではDre2がTah18に依存したNO合成酵素活性を抑制することで、NOが過剰に合成されないよう制御していると考えられる。また、高濃度の過酸化水素存在下ではTah18の過剰発現により合成されるNOがアポトーシス様細胞死を誘導していることが示唆され、NOのシグナル分子としての生理的役割の理解に繋がる結果が得られた。 病原真菌においても、NO合成関連遺伝子の破壊株や発現抑制株の構築と機能解析をH25年度に引き続き、更に進めることができた。 H26年度には、C. glabrata においては、TAH18の病原性への関与が示唆される結果が得られ、また、A. fumigatusにおいては、Mpr1がアセチルトランスフェラーゼとしての機能を有することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
NOによるタンパク質Cys残基のS-ニトロソ化は、タンパク質機能の可逆的な制御に寄与していると考えられる。S-ニトロソ化の検出については、ビオチンスイッチ法がすでに確立されているが、我々はそれを応用した系でS-ニトロソ化タンパク質を探索・同定し、その生理機能を解析することで、NOシグナル伝達の解明を目指す。また、Tah18依存的な細胞死誘導機構の下流経路を明らかにすることを目的として、NOの標的タンパク質・標的遺伝子の探索を行う。また、NAME処理を用いた表現型解析から、Tah18依存的に細胞死が誘導される際、NO非依存的な細胞死も起こっている可能性が考えられる。この経路の解析も、並行して行う。 C. glabrata においては、TAH18の発現を抑制した株の方が、マクロファージ内での増殖は高くなった原因について検討する。また、A. fumigatusにおいては、各種遺伝子変異株におけるNO産生量の定量測定法を確立し、培地中の窒素源によるNO産生への影響検討および感受性評価を行う。更に、Cryptococcus neoformans においては、これまでに得られたmpr1遺伝子破壊株およびアルギニン代謝系遺伝子の破壊株について、表現型の解析およびマウスの感染モデルを用いて病原性を調べる。
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