研究実績の概要 |
トランスサイレチン (TTR) は,主に肝臓にて産生される血清タンパク質の一つである.細胞外に分泌されたTTRは,四量体を形成し,ThyroxineやVitamin Aの輸送単体の機能を有するが,一方で, その正常型または変異型タンパク質は,細胞外で不安定化することで,アミロイドとよばれる線維状の不溶性タンパク質の形成を促進し,TTRアミロイドーシスを引き起こす.これまで,TTRに特異的に作用し,TTRアミロイドーシスに対する治療効果を発揮しうる化合物の探索を目的とし,化合物ライブラリー (LOPAC 1280) を用いたハイスループットスクリーニング (HTS) を行い,ヒット化合物20種類を得た. 本研究では,その中で入手可能であった19種類の化合物 (A~L) についてV30MTTR変異リコンビナントタンパク質を用いた2次スクリーニングを行った. まず,各化合物がTTRアミロイド形成に与える影響についてThioflavin-T (ThT) Assayにより検討した.その結果,14種類の化合物が,アミロイド形成を有意に抑制した.次に,この抑制効果が,(i) 化合物がTTRの四量体を安定化したことに起因するのか,(ii) 化合物がアミロイドに直接作用し,アミロイド線維の伸長阻害,または溶解を促進したことに起因するのかについて明らかにするため種々の検討を行った.まず,(i) の観点を明らかにするために,化合物同時添加後のTTRタンパク質の状態についてSDS-PAGEを用いて解析した.その結果,13種類の化合物 (A, D, F, G, H, I, J, K, L, M, Q, R, S) がTTR四量体構造の安定化作用を有することが明らかになった.次に,(ii) の観点を明らかにするために,予め形成させたTTRアミロイドに対して各化合物を添加し,その後のアミロイド量の変動についてThT Assayで定量した.その結果,2種類の化合物 (B, R) が,TTRアミロイド量を減少させ,アミロイド溶解作用を有することが示唆された.
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