研究課題
本年度における主たる成果は以下の通りである。Kagami-Ogata症候群における詳細な臨床像の決定:われわれは、Kagami-Ogata症候群 (KOS14)と診断された日本人患者34例の包括的な臨床像解析を行い、すべての症状のうち、豊満な頬と口唇の突出を伴う特徴的顔貌と、coat hanger angleの増加を伴う胸郭低形成は本疾患に特異的かつ長期(10歳以上)観察される所見であった。Silver-Russell症候群における第14染色体インプリンティング領域のエピ変異の同定:われわれは、Silver-Russell症候群と臨床診断された患者の包括的メチル化解析を行い、世界で初めて2例において第14染色体インプリンティング領域のエピ変異を同定した。これは、Silver-Russell症候群とTemple症候群が臨床的にオーバーラップすることを示す新しいデータである。Silver-Russell症候群におけるCDKN1Cを含む第11染色体短腕遠位部重複の同定:われわれは、Netchineらが提唱したSilver-Russell症候群の診断基準を満足するが、骨格の左右非対称のない3例において、CDKN1Cを含む第11染色体短腕遠位部の重複を同定した。これは、CDKN1Cの重複が、既に報告されているCDKN1Cの軽度機能亢進変異同様、骨格の左右非対称のないSilver-Russell症候群のサブタイプを招くことを示唆する。IMAGe症候群患者におけるCDKN1C変異の同定:われわれは、本邦におけるIMAGe症候群(子宮内発育遅滞、骨幹端異形成、副腎低形成、男児外性器異常)3例を解析し、2例においてCDKN1Cの機能亢進変異を同定した。そして、IMAGe症候群表現型がシルバーラッセル症候群の表現型を含むことを世界で初めて見出した。
2: おおむね順調に進展している
第1に、われわれが長期にわたって研究してきた第14染色体父性ダイソミーおよびその類縁疾患が、European Network for Human Congenital Imprinting DisorderによりKagami-Ogata syndromeと命名され国際的疾患登録データベースであるOMIMにおいて#608149という番号が割り振られたことが挙げられる。これは、われわれが実施してきた第14染色体父性ダイソミーおよびその類縁疾患の発症機序の解明に加えて、同疾患の詳細な臨床像を決定したことから命名されたものであり、この成果は、2015年2月14日、午前10時のNHK全国ニュースで放送され、また、2015年3月4日の産経新聞朝刊と2015年3月6日の静岡新聞朝刊で報道された。これにより、日本人名のついた症候群名が正式に承認された。第2に、IG-DMR, MEG3-DMR欠失症例におけるiPS細胞が作成され、そのメチル化パターンが、他のDMRのメチル化パターンと異なり、極めて初期の発生時期から高度のメチル化されていることが判明した。このような、微細欠失によるインプリンティング疾患を有する患者由来のiPS細胞作成は、過去に類がなく、きわめて情報価値の高いデータが得られると期待される。第3に、シルバーラッセル症候群の新規発症機序として、第14染色体母性ダイソミーおよびその類縁疾患が存在すること、CDKN1Cを含む第11染色体短腕遠位部重複が身体左右非対称を欠くシルバーラッセル症候群を生じることを見出した。さらに、CDKN1Cの機能亢進変異に起因するIMAGe症候群3例を同定し、IMAGe症候群表現型がシルバーラッセル症候群の表現型を含むことを世界で初めて見出した。以上から、本研究は順調に推移していると考えられる。
メチル化可変領域DMRの樹立機序の解明:われわれは、第14染色体インプリンティング領域のインプリンティングセンターとして作用するIG-DMRとMEG3-DMRを欠失した複数の患者からiPS細胞を樹立した。現在、このiPS細胞を神経に分化させ、メチル化状態の変化を解析中である。本年度は、この解析を継続し、DMRがどのように樹立されるかを明らかとする。原因不明のインプリンティング疾患表現型陽性患者における疾患発症機序解明:第1に、われわれは、原因不明の成長障害患者を対象として、約500の遺伝子を対象とするtarget enrichment解析と包括的メチル化可変領域解析を進めている。現在、予想しなかった第6染色体や第20染色体母性ダイソミーなどが同定されている。本年度は、集積された全ての患者の解析を遂行する。第2に、既知の発症原因が特定しえなかったSilver-Russell症候群患者を対象として、第7染色体長腕SRS決定領域から発見された胎盤DMRのメチル化解析と周辺のインプリンティング遺伝子の変異解析を行う。第3に、われわれは、AS発症最少領域とPWSのインプリンティングセンター(IC)周辺配列が同時に欠失するとASを生じないという家系を見出している。そこで、胎盤細胞を用いてPWS-IC周辺配列の配列がクロマチン構造の変化あるいはこの周辺のtranscriptsの連続性を介してAS発症に影響している可能性を検討する。Kagami-Ogata syndrome(鏡-緒方症候群)の発症機序と表現型の総括:本年2月、われわれが長期にわたって研究してきた第14染色体父性ダイソミーおよびその類縁疾患が、Kagami-Ogata syndromeと命名された。本年度は、現在までに同定した全ての患者の発症機序や臨床像を総括し、わが国初の先天奇形症候群の疾患像を樹立する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (33件) (うち国際共著 4件、 査読あり 33件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 19件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
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