研究課題
以下の2つ課題のを中心に研究を実施した。1. 人工染色体によるセクレトーム解析セクレトーム候補遺伝子をマラリア原虫人工染色体を用い蛍光蛋白融合蛋白質として発現させ実際に宿主細胞に輸送されることを確認した。原虫細胞内と細胞外の区別を付けやすくする為、マラリア原虫はGFP発現原虫株P. berghei ANKA 507cl1株を用い、目的蛋白質は赤色蛍光蛋白mCherryとの融合蛋白質(C末端側)として発現させた。具体的には、上流1-1.5kbp程度の制御領域配列と蛋白コーディング部分を含めた全体をPCRでゲノムから一度に増幅し、人工染色体ベクターPcen-mCherryにサブクローニングし, mCherry融合蛋白質の発現コンストラクトを作成し、血液ステージの原虫に人工染色体コンストラクトを導入し蚊に感染させスポロゾイトを作成した。肝臓ステージをHepG2細胞で培養し共焦点レーザー顕微鏡で局在を観察した。2. 組み換えアデノウイルスワクチンによる感染阻止効果の実証本研究で得られたセクレトームの中には既に以前の研究の結果より示唆されていた原虫蛋白が確認できた。そこでセクレトー解析で同定された蛋白質が実際に抗原として感染阻止免疫を誘導することを実証するため、この遺伝子を発現する組み換えアデノウイルスを作製し、感染阻止免疫が誘導できるかどうか検証した。免疫はマウスで行うためP. yoelii (17XL strain) 由来遺伝子を用いた。アデノウイルスベクターはE1 E3 欠損型を用い293細胞で増殖させた。ウイルスタイターをあげた後マウス(Balb/c)に皮下注射し免疫した。感染阻止はP. yoeliiを静注した後パラシテミアの上昇で評価した。この結果パラシテミアの上昇が免疫群ではコントロールに比べ有意にパラシテミアが減少することが確認され、肝臓ステージの原虫が免疫により排除されたことを示唆した。以上の結果は、本タンパク質がワクチン抗原として利用できることを証明した。
1: 当初の計画以上に進展している
ここまでの研究により取得したセクレトームの中から実際にワクチン抗原候補が確認できたことは大きな進歩と考える。
今後さまざまな異なる免疫手法を比較し最適な免疫条件を探索する。また、抗原のどの部位がワクチンとして最適か、どのようなエピトープが免疫に関与するのかを免疫学的手法を用いて研究する。加えて新たなワクチン候補の探索を引き続き実施する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Cell Host Microbe
巻: 15 ページ: 551-553
10.1016/j.chom.2014.04.008