研究課題/領域番号 |
25253030
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高岡 晃教 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30323611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自然免疫 / ウイルス感染 / 抗ウイルス効果 / RNAサイレンシング |
研究概要 |
我々はこれまで行ってきた自然免疫研究の成果を生かし,感染防御機構の分子メカニズムを明らかにすることで,ウイルス感染のコントロールにつながる新しい切り口を見出したいと考えて研究を行っている. これまで我々は,ポリADP-riboseポリメラーゼ スーパーファミリーに属するPARP-13のshort isoformであるZAPS(ZAP, short form)が,ウイルス認識に関与する重要な細胞質RNAセンサーであるRIG-Iと会合することを見出し,ZAPSはRIG-I及び下流のシグナル経路の活性化を強力に誘導する正の制御因子であることを明らかにした. ZAPSによる自然免疫防御機構をさらに解析する過程で,ZAPSはRIG-Iシグナルでの役割以外に,RNAサイレンシングの制御因子として機能する可能性が示唆された.そこで,我々はウイルス感染防御の今までに無いメカニズムとして,ZAPSを基軸としたRNAサイレンシングの脱制御による“antiviral transcriptome”の活性化という新たな概念を提示したいと考えている.さらに,ウイルス感染以外の刺激やストレスに対する細胞応答時に作動するRNAサイレンシング制御因子をZAPS以外にも探索し,様々な“sub-transcriptome”の存在を追求したい.これまで細胞応答のタンパク質発現誘導の根幹としての従来の転写因子による制御とは全く異なる,特定のサブセットのタンパク質の発現増強に関わる新しい転写後制御機構として,その普遍的な役割の可能性を証明したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が樹立したヒト細胞におけるZAPSのノックアウト細胞を用いて,ZAPSによる新たな抗ウイルス効果を調べるなかで,IFN処理によるIFN-stimulated genes (ISGs)のmRNA発現誘導が,ZAPSの野生型が発現しているコントール細胞 (ZAPS WT細胞)と比較して,ZAPS KO細胞において低いことを見出した.現在,ZAPSがどのようなRNAと結合するのかについて,HITS-CLIP(high-throughput RNA sequencing of cross-linked immunoprecipitation)のアプローチを用いて,ZAPSに結合・制御されていると考えられるmRNAを網羅的に解析しているところである.また,我々はZAPSだけでなく,他のポリADPリボースポリメラーゼ スーパーファミリーメンバーや,ZAPSに結合する蛋白が,自然免疫シグナルにおいてどのような役割を担っているかについて検討をすすめている.
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今後の研究の推進方策 |
ZAPS, 他のPARPスーパーファミリーに属する分子,さらにZAPSに結合性を有するタンパク質,それぞれに結合するRNAを網羅的に調べ,RNA結合タンパク質によって制御されるmRNA群を同定する.またこれらのRNA結合タンパクと自然免疫との関連性について,siRNAを用いた実験系で明らかにする.さらに,ウイルス感染を行い,これらの分子のRNA結合性が抗ウイルス応答に与える影響について,詳細に調べる予定である.具体的にはRNAに結合しない変異体の作製を行い,この変異体が抗ウイルス応答とどのように関連するのかをウイルス感染後のウイルス量をplaque assay等の手法を用いて調べる事で明らかにする予定である.
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