研究課題/領域番号 |
25253038
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大戸 茂弘 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00223884)
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研究分担者 |
松永 直哉(門田直哉) 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10432915)
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60330932)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬学 / 腎障害 / 恒常性 / 幹細胞 / 分子時計 |
研究実績の概要 |
慢性腎不全モデルマウスは、5/6腎摘出により作成し、慢性腎不全モデルマウスの肝臓において、転写因子DBPの発現量および肝CYP3A11発現量が低下していること、Transforming Growth Factor β (TGF-β)の血中濃度が有意に上昇していること、TGF-βシグナル活性が肝臓において亢進していることを明らかにした。そこで、今回、腎不全モデルマウスに抗TGF-β抗体を投与し、TGF-β活性を阻害したところ、肝臓DBPの発現量が基底レベルに回復することを明らかにした。またDBPが制御している遺伝子である肝臓CYP3A11の発現低下も抑えられることを明らかにした。 これまでに、腎不全モデルマウスにおいて、肝臓DBP制御下の遺伝子発現に及ぼすアンジオテンシンⅡ受容体の影響について検討した。腎臓の機能不全に起因する高血圧の原因因子であるアンジオテンシンⅡ(ATⅡ)に着目して、ATⅡの1α型受容体を特異的に欠損した、ATⅡR1α(-/-)マウスにおいて腎不全モデルを作成し、肝臓における遺伝子発現量を測定した。その結果、ATⅡR1α(-/-)の腎不全群では時計遺伝子DBPの発現量低下が抑えられることを明らかにした。そこで、今回、腎不全モデルマウスにおいて、肝臓DBP制御下の遺伝子発現に及ぼすアンジオテンシンⅡ受容体特異的阻害剤 (ARBs)の影響について検討した。ARBs投与により肝臓DBPの発現量が基底レベルに回復することを明らかにした。またDBPが制御している遺伝子である肝臓CYP3A11の発現低下も抑えられることを明らかにした。つまり、腎不全患者において血圧を下げる目的で臨床上広く使用されている降圧薬(ARBs)は、腎不全時において肝臓DBP制御下にある遺伝子発現量の低下を抑える新規作用があることを明らかにした。 現在は、腎不全の治療薬として、TGF-βおよびアンジオテンシンⅡ受容体を標的としたsiRNAおよび化合物の探索を進めている。またこれまでに得られた成果の論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎不全モデルマウスに抗TGF-β抗体を投与し、TGF-β活性を阻害したところ、肝臓DBPの発現量が基底レベルに回復すること、そしてDBPが制御している遺伝子である肝臓CYP3A11の発現低下も抑えられることを明らかにした。次に、腎不全モデルマウスにおいて、肝臓DBP制御下の遺伝子発現に及ぼすアンジオテンシンⅡ受容体特異的阻害剤 (ARBs)の影響について検討したところ、ARBs投与により肝臓DBPの発現量が基底レベルに回復すること、そしてDBPが制御している遺伝子である肝臓CYP3A11の発現低下も抑えられることを明らかにした。以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した課題1~5に加えて、課題6について検討する。またこれまでに得られた成果の論文投稿を予定している。 課題1:腎障害時の臓器障害過程で時計遺伝子発現リズムの変容タイミングを時系列で解析する。課題2:腎障害時の網羅的遺伝子発現解析により時計遺伝子発現リズム変容に係る遺伝子を抽出する。課題3:腎障害時の網羅的タンパク発現解析により時計遺伝子発現リズム変容に係る臓器間シグナル分子を抽出する。 課題4:腎障害時に臓器間シグナル分子の阻害剤、抗体を用い時計遺伝子発現リズム変容に係る臓器間シグナル分子を確定する。 課題5:腎障害時の臓器間シグナル分子を起点に、時計遺伝子の上流・下流の発現制御機構を解明する。 課題6 創薬シーズ化合物の探索とDDSの開発を行う。
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