研究課題
本研究においては,代表的リゾリン脂質であるスフィンゴシン1-リン酸(sphingosine 1-phosphate;S1P),リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid;LPA),リゾホスファチジルセリン(lysophosphatidylserine;LPS)に関して,その病態生理学的役割と生体における代謝制御機構を明らかにするとともに,これらの脂質と関連蛋白の解析の臨床検査医学的応用を目指し,もって,リゾリン脂質の病態検査学の確立という未知の分野を開拓することを目指した.S1Pに関しては,キャリアとしてのApoMの重要性,それによるインスリン分泌促進作用を明らかにするとともに,LDL受容体とApoEによるApoM/S1Pのクリアランスという全く新しくかつ重要な代謝制御機構を明らかにすることができた.S1PのサロゲートマーカーとしてのApoMの測定系を構築し,臨床目的の使用に耐えうるデータを得た.また,血小板-リンパ球のクロストークにおけるS1Pの重要性を明らかにすることができた.LPAに関しては,前年から継続していた,急性冠症候群におけるオートタキシンに依存しない血漿LPA上昇の機序に関して質量分析によるLPA分子種の解析を通して深めることができ,論文化できた.LPSに関しても,大腸癌細胞に対する遊走惹起作用をその細胞内シグナルとともに明らかにすることができた.さらいは,マクロファージへの作用を介して,動脈硬化に関与しうる可能性を明らかにした.S1P,LPA,LPAの三者に関して,生体における(病態)生理学的重要性をさらに明らかにすることができたとともに,臨床検査医学的応用に関して,これら脂質自身でなく,(S1Pのキャリアとしての)ApoM,(LPA産生酵素としての)オートタキシン,(LPS産生酵素としての)PS特異的PLA1の測定の実用性を示すことができた.
2: おおむね順調に進展している
リゾリン脂質の代表格であるS1P,LPA,LPSに関して,その病態生理学的役割に関する新知見を明らかにするとともに,S1P,LPAの生体における代謝制御機構に関しても,新しい側面を明らかにした.S1PキャリアとしてのApoM,LPA産生酵素としてのオートタキシン,LPS産生酵素としてのPS特異的PLA1のそれぞれの意義を示すことができ,リゾリン脂質の病態検査学の道筋をつけることができたと考えている.
S1P/ApoMの生体における糖・脂質代謝への関与,急性冠症候群における血漿中の不飽和LPA上昇の機序と意義,LPSの動脈硬化性疾患への関与に関する知見を深めるとともに,ApoM,オートタキシン,PS-PLA1の測定の臨床検査医学的応用に関する研究を継続する.ApoMとともに,血中S1Pのキャリアとして重要であるアルブミンの酸化・還元状態とS1P保持能に関して解析し,S1Pの血中動態のより詳細な解明を目指す.
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