研究課題
基盤研究(A)
[目的]ミトコンドリア機能低下に伴う代謝変化の解析[結果] (1)p32-/-MEF細胞のメタボローム解析:p32はミトコンドリア内翻訳に必須蛋白質であり、そのノックアウトはミトコンドリア電子伝達系の強い機能不全を引き起こすことを報告している。まず、p32-/-MEF細胞をミトコンドリア機能不全のモデルとして、LC/MS/MSおよびGC/MS/MSを用いてエネルギー代謝並びアミノ酸代謝関連のメタボローム解析を行った。野生型MEFと比較して多くの代謝産物で2倍以上の変化を見出した。(2)ミトコンドリアDNA欠損細胞株におけるメタボローム解析:上記の代謝変化のミトコンドリア機能低下との関連の一般性を検証する目的で、ミトコンドリアDNAを欠損した細胞(143Brho0細胞)と欠損していない親株(143B)を同様にメタボローム解析を行った。p32-/-MEF細胞で観察された代謝変化に共通する代謝産物を10以上同定することができた。これらは、ミトコンドリア電子伝達系の機能障害に共通する代謝変化であることが示唆された。(3)MELAS患者血漿のメタボローム解析:上記で得られた代謝変化パターンがミトコンドリア病患者血漿でも得られるかを検証するために、最も患者数の多いミトコンドリア病であるミトコンドリアDNAにA3243G変異を持つMELAS患者と年齢と性をマッチさせた健常人3組において、その空腹時血漿のメタボローム解析を行った。(1)や(2)でも見られ、少なくともこれまで血漿解析で報告されていない3種の代謝産物において代謝パターンの変化が見出された。[考察」ミトコンドリア病患者血漿のメタボローム解析により、筋生検によらないミトコンドリア機能低下を検出できる可能性が示唆された。今後、さらに解析患者数と解析代謝産物項目を増やして検証していく必要がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の目的は、臓器特に筋肉の生検に頼らず血液サンプルを用いた、ミトコンドリア病患者の診断システムの構築にある。申請時点で、血漿(あるいは血清)中の蛋白質、代謝産物、small RNAの網羅的解析によるバイオマーカーの検出を計画していた。今回、メタボローム解析系を構築し約300種の代謝産物が同定定量できるようになった。その系を用いて、モデル細胞、さらには患者血漿の解析を実施し、新しいバイオマーカーの候補として、乳酸などの既知のマーカーよりもはるかに変化の大きいこれまでに知られていない代謝変化パターンを見出すことに成功した。
(1)今回見出された候補マーカーをさらに多くのMELAS患者や原因が異なるミトコンドリア病患者について解析し、バイオマーカーとしての有用性を確認する予定である。(2)簡便で臨床検査に適した新しい血漿タンパク質の網羅的解析系の構築は現時点ではうまく進んでいない。系の開発の努力は続けるが、今後はむしろ、測定系がほぼ順調に稼働しているメタボロームによる解析代謝領域を拡大し、解析代謝産物数を拡大するほうが、成果が得られやすいのではないかと考えている。(3)small RNAについては、さらに多くの患者血漿が蓄積した時点で、市販キットを用いて解析を実施する計画である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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