研究課題/領域番号 |
25253051
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渋谷 健司 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50322459)
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研究分担者 |
池田 奈由 独立行政法人国立健康・栄養研究所, その他部局, 研究員 (20573603)
スチュアート ギルモー 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20608913)
大田 えりか 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 医療政策科学研究室長 (40625216)
井上 真奈美 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (70250248)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疾病負担(burden of disease) / 死因分析 / 平均余命 / 危険因子 / 小地域分析 / ベイズ推計 / 健康格差 / 政策評価 |
研究概要 |
本研究は、①我が国の死亡と障害による疾病負担の推移、②疾病負担の将来予測、③危険因子に起因する疾病負担とその推移、④将来予防できる疾病負担、⑤有効カバレージ分析とその推移の5つに関して、包括的な疾病負担分析を行う我が国で初めての試みであり、特に小地域や社会階層別の分析を行うことを目的としている。 初年度は、主にデータおよび分析手法の準備と予備的解析を進めた。①~③に関しては、世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease, GBD)の国別分析のアップデートに貢献し論文が受諾されている。また、①に関しては、地方自治体レベルの平均余命データベースを作成し、所得層別にみた平均余命の傾向を示すための予備解析を行った。さらに厚生労働省の死亡データを利用し、1974年~2010年の地方自治体レベルの年齢・性別・死因別データベースを作成中である。尚、死因コードは世界の疾病負担研究に使用されているコードに変換し、このデータを使用したベイズ法による小地域分析を行う予定である。②に関しては、我が国の疾病データの同定とベイズ推計を用い障害による疾病負担の推計を進めている。 ③と⑤に関しては、非感染性疾患の危険因子に起因する疾病負担に関する分析の一環として、都道府県レベルでの死因別死亡分析を行った。2010年国民健康・栄養調査と人口動態調査死亡票の個票データの二次利用により、喫煙や高血圧などの危険因子に起因する死因別死亡数を都道府県別に推計した。その結果、いずれの都道府県においても喫煙や高血圧が主な死亡因子であった。しかし、都道府県によるばらつきもあり、我が国の平均余命の地理的分布を理解する上での有用な情報が得られた。本分析の一部については、米国での国際学会や地方自治体レベルで開催された研究会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
所得階層別にみた平均余命の解析に関してはほぼ終了しており、現在は死亡率の小地域分析のため新しい時空間モデルを作成している。疾病負担のうちの障害による負担を示すYears Lived with Disabilities (YLDs)を分析するために、ベイズ推計によるメタ回帰分析を行うためのDisMod-MRと呼ばれるソフトウェアの使用に関する研修を受け、障害による疾病負担の推計を進めている。 さらに、GBD研究の事務局のある米ワシントン大学・保健指標評価研究所(the Institute of Health Metrics and Evaluation, IHME)訪問時に、地方レベル・小地域における最新の危険因子分析(comparative risk assessment, CRA)を行うための分析手法の議論を行い、2年度目以降の実施計画を作成した。これらの分析結果は、平成26年度に論文として発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IHMEと協議のうえ作成した我が国の小地域における疾病負担研究のモデルを適応し、平成26年度内に県レベルの危険因子分析を終了させる予定である。また、世界の疾病負担研究の死因コードを使用したベイズ法による小地域分析も完成予定である。この新しい時空間モデルを使用した分析により、特に小地域や社会階層別の日本における主な死因と障害および危険因子による包括的な疾病負担の推移を示すことができると考える。そして、これらの分析を終えた後に、将来予防できる疾病負担の推計を行う予定である。
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