研究課題
基盤研究(A)
NASH (non-alcoholic steatohepatitis)は、肥満に伴う脂肪肝から肝硬変、肝癌に進行する病態を示すが、その原因およびメカニズムは不明である。これまでに、申請者らはAIM ノックアウトマウスに高脂肪食を与えると、NASH 類似の病態、すなわち肥満に伴い、①脂肪肝の亢進、②線維化、③肝癌の発生が順次起きること、したがって、このモデルの解析によりNASH の病態メカニズムを解明できるというヒントを得た。そこで、AIM KOマウスを用いて肥満から細癌の発生に至る各ステップごとに、病態メカニズムの解析を行い、NASH に対する有望な治療法を開発する上で、重要な知見を得ることを目的としている。H25年度は、高脂肪食を与えた際のWTとKOの肝臓における変化を比較し下記のような知見を得た。① 脂肪細胞と同様、肝細胞はAIMを取り込み、取り込まれたAIMが脂肪酸合成酵素の活性を阻害するため、AIM KOマウス肝臓は過度の脂肪蓄積がみられた。初代培養肝細胞を用いてAIMの取り込みと脂肪酸合成酵素とAIMの結合、酵素活性の抑制を解析し、上記効果をin vitroでも確認した。② 高脂肪食を負荷したWTとKOマウスの肝臓について脂質プロファイルを解析したところ、両者に脂質の種類に差はなく、線維化につながるような脂質の蓄積はみられなかった。③ 高脂肪食を負荷したWTとKOマウスの肝臓、および肝臓内のクッパー細胞において炎症性サイトカイン、ストレス応答遺伝子、線維化に関与する遺伝子の発現についてRNA seq解析により行ったところ、両者に顕著な差はみられなかった。また、肝臓の線維化の程度に差がないことをシリウスレッド染色により確認した。以上のことから、肝癌の発生はAIMがないことにより脂肪肝の亢進が細胞にストレスを与え、発癌を誘導するというわけではなく、AIMの有無にかかわらず脂肪肝のストレスにより同様に癌細胞は発生するが、AIMがないとその除去が出来ていない可能性というが高まった。
2: おおむね順調に進展している
H25年度の予定であった(A)脂肪肝更新のメカニズム解析、および(B)脂肪肝から線維化に至るメカニズム解析について十分な知見が得られ、肥満によるNASHあるいは肝癌の発症メカニズムの解明に近づいた。またH25年度に得た知見により、AIMはNASHや肝癌の発生の予防に寄与しているのではなく発生した癌細胞の除去に寄与している可能性が強くなったことから、AIMは肥満による肝癌誘導だけでなく、さまざまな癌の除去に対して効果がある可能性が示唆され、これは有用な知見であると考えられる。
H25年度の成果により、AIMノックアウトマウスに高脂肪食を与えて誘導した脂肪肝においては、脂質プロファイルや酸化ストレス、ERストレス等の各種ストレス、炎症の誘導はWTとほぼ同様であり、発癌の原因となるものに差がなかった。この知見から、AIM存在・非存在にかかわらず、高脂肪食負荷により肝癌の発生は誘導されるが、その後の「癌の除去」にAIMが必要である可能性が高まった。そこでH26年度はAIMによる癌除去の仕組みを明らかにしていく予定である。
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PLOS ONE
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