研究課題
NASH は、肥満に伴う脂肪肝から肝硬変、肝癌に進行する病態を示すが、その原因およびメカニズムは不明である。これまでの我々の研究からAIM 欠損マウスに高脂肪食を与えるとNASH 類似の病態が順次起きることから、このモデルを解析することでNASH の病態メカニズムの解明に取り組んだ。H25、26年度の解析から、高脂肪食負荷により、AIM欠損マウスにのみ顕著な肝癌が形成することが確認された。AIMは脂肪細胞と同様に肝細胞に取り込まれ、脂肪酸合成酵素の活性を抑制することで中性脂肪の蓄積を抑えることから、AIM欠損マウスでは脂肪肝の過度の進行と、それによる酸化ストレス等の増加がみられたものの、肝臓の脂質プロファイルや炎症、細胞死、線維化等、癌の要因と考えられるファクターに野生型との差はなく、AIMは細胞の癌化を抑制するのではなく、癌化した細胞を除去する役割をもつことが明らかになった。H26年度はこの機構が補体系の活性化によるものであることを明らかにしたが、H27年度は、このAIMによる癌細胞除去機構がNASH肝癌に与える影響をさらに調べるために、高フルクトース食負荷におけるAIMの役割を解析した。すなわち、高フルクトース食をAIM欠損および野生型マウスに投与したところ、高脂肪食負荷時と同様に、癌の原因となる炎症、ストレス、線維化に差はないにもかかわらず、AIM欠損マウスにのみ肝細胞癌の形成が観察された。このことから、AIMによる癌細胞除去機構が高脂肪食負荷時のみだけでなく、様々な原因から起きる癌に有効であることが明らかになった。逆に言えば、AIMによる癌細胞除去機構が存在しない場合は、脂肪やフルクトースなど、現代生活に密接に関る様々な要因によって肝癌が誘発される危険性があることが示された。さらに我々は、AIMを肝癌の治療や予防に応用すべく、AIMを効率的に肝癌に集積させる系の開発に取り組んでいる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Nature Medicine
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