研究課題
孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、RNA編集酵素 adenosine deaminase acting on RNA 2 (ADAR2)の 発現が進行性に低下することに依るGluA2サブユニットのRNA編集効率低下に起因したAMPA受容体からのCa2+流入増大が病因的メカニズムに深く関わっている。ヒトADAR2遺伝子の制御に関わる因子の同定のために構築した、レポーターアッセイ系および転写因子のsiRNAによるノックダウンを用いて、ADARB1遺伝子発現を制御する転写因子のスクリーニングを行い、有意な制御活性を持つ転写因子を数種類同定した。年度中にRIKENよりFANTOM5のデータが公開されたため、従来の予測方法に加え、エンハンサーRNA(eRNA)の発現を指標としたヒトADARB1遺伝子感受性部位の解析を進めた。ADARB1のプロモーターと近傍のエンハンサーRNA(eRNA)の発現量について,中程度の強さの正の相関関係(Spearmanの相関係数ρ=0.52)を持つeRNAを生み出すエンハンサーを1つ発見した.ADARB1遺伝子の発現量は細胞種により異なることを利用して,ADAR2 レベルが高い、または低い組織トップ10を各々選び出し、計1673個の中からADARB1遺伝子の発現との間に相関関係が高い転写因子を、グレードを付けて選定した.最も相関の高いレベルとして32因子が同定された。遺伝子制御機構が組織特異性に富むこともあり、運動ニューロンにおけるeRNA発現を解析する必要性があることから、cap analysis of gene expression(CAGE)解析のために、凍結保存した正常対照ヒト脊髄よりレーザーミクロディセクターを用いて運動ニューロンを数万個単位で切り出した。得られた組織から総RNAを抽出し、CAGE解析に付し制御因子同定に役立てる。
3: やや遅れている
年度途中にFANTOM5のデータベースが公開され、より情報量の多い解析法であるCAGE解析法を行うことに方針を変更した。その解析結果により、従来法で絞り込んだ候補転写因子に追加・変更があることが予想されるために、候補転写因子のアッセイは進めていないため、送れていると評価した。しかし、CAGE解析により得られる情報は従来法より遙かに豊富であり、その意味では目的達成速度が加速する可能性がある。
1)CAGE解析はRIKENに依頼して進行中である。2)その結果から、従来法で絞り込んだ候補転写因子リストを改訂する。3)ADARB1遺伝子発現アッセイシステムを利用して候補転写因子の生物活性を測定する。4)患者運動ニューロンにおけるADARB1遺伝子発現制御因子の変化を解析する。5)ALS関連遺伝子変異がこれらの因子に及ぼす影響を解析する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Brain Res
巻: 1550 ページ: 536-546
0.1016/j.brainres. 2014.01.006
巻: 1584 ページ: 28-38
10.1016/j.brainres.2013.12.011
Dementia Japan
巻: 28 ページ: 307-318
臨床神経
巻: 54 ページ: 1151-1154
http://square.umin.ac.jp/teamkwak/news.html