研究課題
1 摂取栄養素による臓器間ネットワーク解析平成25年度までに、肝への糖取り込み亢進、脂質の蓄積亢進より、迷走神経求心路―交感神経遠心路の臓器間神経ネットワークを介して、それぞれ適応熱産生抑制、エネルギー代謝亢進が生じることを示した。さらに、平成26年度には、アミノ酸の取り込み亢進により、血中での中性脂肪分解抑制を生じる仕組みを見出している。この結果は、これまで細胞内で考えられていた栄養素の代謝マップは、個体レベルでの臓器間ネットワークも含めて考える必要があると考えられ、さらに詳細な研究を進めることで、新たな概念を切り開く可能性が期待される。2 摂取栄養素によるインスリン分泌調節短鎖脂肪酸の摂取により糖応答性のインスリン分泌が亢進されること、膵β細胞自体が短鎖脂肪酸の摂取を認識する機構を有していることを見出した。この膵β細胞による短鎖脂肪酸を認識する機構は、これまで想定されていない新しい概念を含む者の可能性が示唆され、次年度以降、この概念の提唱に向けた研究を進展させる。3 環境エンリッチメントによる代謝変化環境エンリッチメント下での飼育により、摂食行動に違いが認められ、個体レベルでの糖代謝・エネルギー代謝・インスリン抵抗性に影響を与えることが示された。個体レベルでの代謝調節に外部環境認知機構が大きな役割を果たすことを示すものであり、糖尿病や肥満に対する新しい治療法の開発につながる可能性が想起される。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の3つの外部環境認識機構の新たな発見は、個体レベルでの代謝調節が外部環境で大いに影響を受けることを示唆するものである。1)臓器間神経ネットワーク機構が、三大栄養素により、同じ神経経路を経て異なった表現型につながるという現象は、肝での摂取栄養素の認知に基づき、異なった情報が脳に送られ、最終的に、個体レベルでの目的にかなった対応につながることを意味するもので、全く新しい概念形成につながる。2)膵β細胞は、種々の栄養素に応答し、インスリン分泌を調節していることはこれまでも報告されているが、今回の短鎖脂肪酸認識機構は、これまでの報告にない全く新しいメカニズムであり、代謝領域を超えて、外来物質の認識メカニズム全般に大きなインパクトのある研究成果につながるものと期待される。3)環境エンリッチメントをモデルとして、摂食を含めた代謝の変化を見出したことにより、個体レベルの代謝調節と外部環境とが科学的に証明され、脳の高次機能と末梢臓器の代謝の関係の解明や、環境に変化を与えるなどの手法による全く新しい視点からの治療法の開発につながることが期待される。4)脳の中での神経ネットワークと液性因子とのinteractionについては、すでに前年度に解明済みである。
1 摂取栄養素による臓器間ネットワーク解析前年度までの肝アミノ酸代謝亢進による個体レベルでの脂質代謝調節機構について、神経切断や阻害剤投与などの検討を行い、その詳細な機序を解明する。これにより、摂取栄養素に応じて臓器間神経ネットワークが個別に対応し、個体レベルでの代謝が制御されているという新しい概念の提唱につなげる。2 摂取栄養素によるインスリン分泌調節膵β細胞の全く新しい短鎖脂肪酸認識機構について、その分子機序を詳細に証明する。このメカニズムに関わる受容体を同定し、受容体の発現様式や細胞内シグナル伝達メカニズムを解明する。3 環境エンリッチメントによる代謝変化これまでに、環境エンリッチメント下での飼育により認められる摂食行動に違いについて、脳の海馬の関与やその神経細胞におけるメカニズムを検討し、脳による外部環境受容と個体レベルでの代謝変化とのメカニズムについて解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 10件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 17件)
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