研究課題
平成26年度研究では平成25年度に引き続き、マウス体内でのヒト造血再構築の効率を高めることを目的に、次世代免疫不全マウスの更なる改良を進めた。ヒト造血細胞生着効率を高めるストラテジーとして、CD47/Sirpa系を介したマクロファージ寛容に注目してきた(Nat Immunol 8, 2007)。Sirpaにはマウスストレイン固有の遺伝子多型が認められるが、NOD型のSirpaのみがヒト造血細胞上のCD47と強く結合し、マクロファージに対する貪食抑制シグナルを誘導可能であることを見出した。実際、C57BL/6.Rag2(nullIl2rgnull) マウスにNOD型Sirpaを遺伝子導入した新規免疫不全マウスC57BL/6.Rag2(nullIl2rgnull) mice harboring NOD-Sirpa (BRGS)では、NOD.Rag1(nullIl2rgnull) マウスと同等以上のヒト造血細胞生着が認められた。一方、ヒト骨髄増殖性腫瘍ならびに骨髄異形成症候群を効率よくマウス内で再構築するためには、BRGSでは未だ不十分であることも判明した。現在、ヒト顆粒球系造血を支持するヒトIL-3をノックインしたBRGSラインを作成しており、生着効率の改善を図っている。また、あるレセプター型チロシンキナーゼに変異を有するマウスをバックグラウンドとすることで、ヒト顆粒球系細胞のキメリズムが著明に上昇することを見出した。これら新たな工夫を凝らしたマウスラインをもちいて、骨髄増殖性腫瘍ならびに骨髄異形成症候群における腫瘍性幹細胞の同定実験を開始している。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記したように、ヒト造血を高率に再構築しうる次世代免疫不全マウスラインの樹立に成功し、骨髄増殖性腫瘍や骨髄異形成症候群の腫瘍性幹細胞を解析する実験基盤が確立した。
ヒトIL-3ノックインBRGSマウスおよびレセプター型チロシンキナーゼX変異BRGSマウスをもちいて、骨髄増殖性腫瘍および骨髄異形成症候群における腫瘍性幹細胞の純化同定を行う。骨髄増殖性腫瘍幹細胞を包括的に理解するために、ET, PVの患者骨髄中に存在すると予想される腫瘍性幹細胞を既知あるいは新規の幹細胞マーカーをもちいて純化する。さらに、ヒトET, PVの病態をマウス中に再構築できる腫瘍性幹細胞分画を絞り込む。また、それぞれの純化腫瘍性幹細胞に対し、ディープシーケンサーをもちいた遺伝子プロファイリングを行い、最終的には、それぞれの病態の違いの原因となる分子生物学的メカニズムの解明を目指す。同様な腫瘍性幹細胞探索を、骨髄異形成症候群に対しても展開する。
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