研究課題
昨年発表の我々の研究により、Phospholipase C-β3(PLCb3) KOマウスでアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis, AD)様の皮膚炎が自然に発症し、その発症にStat5を介したマスト細胞の活性化が重要であることが示された(Ando et al., Cell Reports, 2014)。1.ダニ抗原誘発性のAD様皮膚炎にはTSLP受容体と高親和性IgE受容体(FcεRI - マスト細胞や好塩基球で高発現)が重要であることをあきらかにしている(Ando et al., Journal of Investigative Dermatology, 2014)が、抗体Ba103のよる好塩基球の除去実験や2種類の好塩基球の欠損マウス(BasTRECKマウスとMcpt8-DTRマウス)を用いた実験により、好塩基球は必須ではないことを明らかにした(論文執筆中)。2.PLCβ3-/-;FcεR1a-/-二重KOマウスはPLCβ3-/-マウスと同様に皮膚炎を自然発症する。PLCβ3-/-;MyD88-/-二重KOマウスは現在皮膚炎が発症するか否か観察中である。3。PLCβ3遺伝子のfloxedマウスが1系統樹立されており、Stat5 floxedマウスとともに、各種のCre発現マウスと掛け合わせていて、繊維芽細胞におけるPLCβ3, Stat5, Stat6によるPeriostin産生制御機序およびケラチノサイトでのPLCb3によるTSLPの産生制御機序を解析するin vitro実験を開始しつつある。後述のCRISPR-Cas9系で遺伝子を切断した繊維芽細胞やおよびケラチノサイトも用いて、これらの実験を開始できるまでになった。
3: やや遅れている
繊維芽細胞・ケラチノサイト・マスト細胞などで遺伝子を迅速に切断するため、CRISPR-Cas9系を導入した。DNA切断酵素Cas9をsgRNAを用いて、狙い通りのDNA部位を切断するために、sgRNAのデザインをより正確にするための方法を見いだした(論文執筆中)。この方法を用いて、SykやLat遺伝子を破壊すると、FcεRIを介したマスト細胞の活性化が完全に阻害されることを確認した。現在、繊維芽細胞のPLCβ3, Stat5, Stat6等の遺伝子を破壊する実験を施行中であり、この点では予定より遅れているが、CRISPR-Cas9系を早期に導入したことは充分価値のあることと判断している。また、Jak-Stat5 阻害剤をダニ抗原誘発性のAD様皮膚炎で検討する件は、相手方(トロント大学)の事情で阻害剤が入手できず、かつ、他の研究グループにより同様の研究がなされた(Jak阻害剤は有効)ことから、断念せざるをえなかった。
上述の通り、CRISPR-Cas9系を導入した。このことは計画の変更にあたるが、CRISPR-Cas9系を早期に使いこなし、狙い通りのDNA部位を切断するために、sgRNAのデザインをより正確にするための方法を見いだしたことは充分価値のあることと判断している。AD様皮膚炎にマスト細胞上のFcεRIが重要であることから、CRISPR-Cas9系を用いた新たなFcεRI signaling moleculesも探索している。以上の変更により、本研究の目的の大半は、最終年度中に達成できるめどが立つとともに、所期以上の成果が生まれることが期待できる。
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