研究課題
基盤研究(A)
DSM-IV TRの診断基準で双極性障害と診断された患者のゲノムサンプル及び臨床情報を収集した。患者150名を対象に高解像度のcomparative genomic hybridization (CGH)法を用いてゲノムコピー数変異(CNV)解析を実施した。H25年度の解析数は比較的少数にとどまるため、統計学的に有意な所見が得られる段階ではないが、一部の患者において発症に関与する可能性のあるCNVを同定した。双極性障害の患者で同定したCNVの例として、16p12.1重複、15q11.2欠失、15q13.3重複(CHRNA7)がある。近年、同一のCNVが複数の精神疾患の発症に関与する例が報告されているが、これらCNVは日本人の統合失調症・自閉症スペクトラム障害患者においても同定済みである。また2Mb以上の稀なCNVは一般的に病的意義を有すると考えらえるが、患者1名で5.1Mbの大規模重複を同定した。一方、小規模CNVとしてIMMP2L、PCDH15、NLGN4X、USP46に重なる欠失・重複を同定した。この中には既に精神神経疾患との関連が指摘されているものもある。以上から、双極性障害の発症にCNVが関与することを示唆する所見を得ている。今後も双極性障害のサンプル数を拡大してCNV解析を実施し、各CNVの発症との関連を明確化する必要がある。また病的CNVを有する症例ではその臨床的表現型を明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
双極性障害のゲノムサンプリングや臨床情報の収集は他施設と共同で順調に進んでいる。全ゲノムCNV解析も予定通り開始し、5Mbを超える大規模重複に加え、16p12.1重複、15q11.2欠失、15q13.3重複などの既報のCNV、さらに小規模のCNVを複数同定した。既報や健常者データとの比較から、これらCNVが双極性障害の発症に関与する可能性が考えられる。従って、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
引き続き、双極性障害患者のゲノムサンプルと臨床情報の収集を継続していく。そのうえでサンプル数を増やし全ゲノムCNV解析を実施し、関連解析や家系解析から各CNVと双極性障害の関係を明確化する。一部のCNVに関してはサンガー法やさらに高解像度のCGH法で再確認を行う。病的意義のあるCNVを持つ患者では、臨床表現型や中間表現型について詳細に検討する。また同一CNVが双極性障害を含めた複数の精神疾患に関連する可能性があることから、全ゲノムシーケンスを行い、双極性障害の発症に関与する他の稀な遺伝子変異を網羅的に同定する。ゲノム解析を病因・病態研究に繋げるために、CNVをもつ患者からリンパ芽球細胞株やiPS細胞を樹立し、分子病態の解明に利用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件)
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