研究課題/領域番号 |
25253073
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山川 和弘 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30241235)
|
研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
キーワード | てんかん / 遺伝子 / マウスモデル / 治療 |
研究概要 |
若年性ミオクロニーてんかん(JME)は、思春期に発症する最も頻度の高いてんかんの一つである。我々はこれまでに、胎生期脈絡叢と出生後脳室壁上衣細胞繊毛で発現が多くみられるmyoclonin1タンパクをコードするEFHC1遺伝子の変異がJME患者で見られることを発見し論文報告している。また最近、別のグループによりEfhc1のホモ接合変異が致死性の重篤難治てんかんで報告された。更に我々はmyoclonin1がカルシウムを制御する膜受容体など複数の蛋白と結合しそれらの機能を制御すること、脳の特定部位で特異的にmyoclonin1を除く事がてんかん症状を再現するに十分であること、それらの領域で機能を有する新規な2種の遺伝子でもJME患者での変異がみられることなどを見いだしている。本課題では、上記受容体などのmyoclonin1結合蛋白を介した発症カスケードの解明、Efhc1遺伝子ノックアウトマウスにおけるEfhc1遺伝子導入の治療効果の検討、加えて2種の新規遺伝子ノックアウトマウスの作成と解析および症状確認後のそれら当該遺伝子の導入療法の妥当性の検討などを行うことにより、JMEおよび関連難治てんかんに共通する新規発症機序の解明とそれら疾患に広く適用できる有効な治療法の開発につなげることを目的とする。本年度は、myoclonin1がカルシウムを制御する膜受容体に結合する蛋白領域を特定し、当該領域に相当する合成ペプチドにより当該結合を阻害し、それがカルシウム制御能を抑えることを見いだした。また、レンチウイルスベクターによりマーカー遺伝子を上記脳領域に導入することに成功した。また、新規2遺伝子について、JME患者において新たに複数の変異を見いだした。更に、1遺伝子についてfloxedノックアウトマウスを導入し、解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で目的とするカルシウム制御受容体を介した発症カスケードの解明については、myoclonin1がカルシウムを制御する膜受容体に結合する蛋白領域を特定し、当該領域に相当する合成ペプチドにより当該結合を阻害し、それがカルシウム制御能を抑えることを見いだした。Efhc1遺伝子ノックアウトマウスにおけるEfhc1遺伝子導入の治療効果の検討については、レンチウイルスベクターによりマーカー遺伝子を上記脳領域に導入することに成功した。加えて2種の新規遺伝子ノックアウトマウスの作成と解析および症状確認後のそれら当該遺伝子の導入療法の妥当性の検討については、新規2遺伝子についてJME患者において新たに複数の変異を見いだし、更に、1遺伝子についてfloxedノックアウトマウスを導入し、解析を開始した。以上により、計画はおおむね順調に推移していると言うことが出来る。
|
今後の研究の推進方策 |
カルシウム制御受容体を介した発症カスケードの解明については、myoclonin1とカルシウムを制御する膜受容体の結合を阻害する合成ペプチドを発現するトランスジェニックマウスを作製し、表現型に対する効果を評価する。また、同様の解析を酸化ストレスにより活性化される受容体についても行って行く。Efhc1遺伝子ノックアウトマウスにおけるEfhc1遺伝子導入の治療効果の検討については、レンチウイルスベクターによるEfhc1遺伝子の特定脳領域への導入を試みて行く。2種の新規遺伝子については、遺伝子改変疾患モデルマウスの病態解析、発症カスケード解析、遺伝子導入による治療の検討などを行って行く。以上により、JMEおよび関連難治てんかんに共通する新規発症機序の解明とそれら疾患に広く適用できる有効な治療法の開発を目指す。
|