研究実績の概要 |
若年性ミオクロニーてんかん(JME)は、思春期に発症する頻度の高いてんかんである。我々はこれまでに、胎生期脈絡叢と出生後脳室壁上衣細胞繊毛で発現するmyoclonin1タンパクをコードするEFHC1遺伝子の変異がJME患者で見られること、EFHC1ノックアウトマウスが自然発症ミオクロニー発作を示すこと、myoclonin1がカルシウム制御膜受容体などを制御すること、脳の特定部位で特異的にmyoclonin1を除く事がてんかん症状を再現するに十分であることを見いだしている。本年度は、myoclonin1とカルシウム制御膜受容体結合阻害ペプチド発現トランスジェニックマウスについて阻害を確認し、てんかん感受性の変化の有無を確認した。また、JME大家系の全ゲノムエクソーム解析と相関解析、334家系での候補遺伝子解析などによる第2のJME原因遺伝子としての腸管細胞キナーゼをコードするICK遺伝子の同定、これら変異が神経前駆細胞の移動を阻害すること、Ick欠損マウスがイソフルラン(吸入麻酔薬)による麻酔の傾眠時に強直間代発作を引き起こすことなどを明らかにし論文報告した(Bailey et al, Yamakawa - co-corresponding author. Variant intestinal cell kinase in juvenile myoclonic epilepsy. New Eng J Med Mar 15; 378:1018-28, 2018)。腸管細胞キナーゼはmyoclonin1と同様に、脳でも強く発現し細胞分裂時の微小管生成、細胞増殖に関わることから、これらの異常が共通のメカニズムを通しててんかんを引き起こしていると考えられた。また、第3のJME原因遺伝子myoclonin3ノックアウトマウスを完成し、てんかん感受性の亢進を見出した(論文準備中)。
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