研究課題/領域番号 |
25253075
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
功刀 浩 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第三部, 部長 (40234471)
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研究分担者 |
服部 功太郎 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第三部, 室長 (50415569)
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研究期間 (年度) |
2013-10-21 – 2016-03-31
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キーワード | プロテオミクス / ゲノム / マイクロRNA / バイオマーカー / うつ病 / 統合失調症 / 双極性障害 |
研究概要 |
近年、統合失調症や気分障害の診断や経過判定の指標となるバイオマーカーの開発が精力的になされているが、いまだに確立したマーカーといえるものはない。生化学的指標では血液を中心に探索されているが、脳内動態をどの程度反映するか疑問が残る。そこで本研究は、脳脊髄液の分子動態を網羅的に明らかにするとともに、統合失調症と気分障害の脳脊髄液を用いて診断や経過判定の指標となるバイオマーカーを見出すことを目的とする。 これまでに、アプタマー技術を用いた最新のプロテオミクス解析によって、212名の被験者のたんぱく質(1129分子)について定量した。その中で、統合失調症や気分障害の診断マーカー、症状判定指標となる候補分子を140同定した。例えば、うつ病との関連で特に注目される分子としてfibrinogenがあり、健常者の上位95パーセンタイルより高い値を示したうつ病患者が7名おり、独立のサンプルでも確認されたことから、「中枢フィブリノーゲン亢進型うつ病」というサブタイプがある可能性が示唆された。そのほか、接着分子B(特許出願予定のため具体的な分子名は伏せる)は、健常者と比較してうつ病患者において有意な低下を示すとともに、重症度と有意な負の相関を示した。免疫系の分子Cも、一部のうつ病患者で突出した値を示し、サブタイプ分類に有用である可能性が示唆された。なお、BDNFの受容体であるTrkBは、うつ病で低下しており、注目された。統合失調症においても、多数の興味深い結果を得ている。 miRNAについては、東レ3D-Geneによる上記サンプルの解析を行い(2019分子の網羅的解析)、バイオマーカー候補として重要な39分子を同定した。今後、再現サンプルによる検証を行い、さらに分子を絞る予定である。 上記のサンプルのうち138名のサンプルについて100万SNPsチップを用いた全ゲノム解析を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳脊髄液サンプルの収集は、本研究計画提出時(2013年10月)におよそ400検体であったが、その後、順調に収集を続けることができ、2014年5月には562検体(統合失調症204、大うつ病118、双極性障害84、健常者134、その他22)となった。ただし、非服薬症例は依然として少ないという問題点がある。 オミックス解析については、当初の予定では、網羅的解析(スクリーニング)を行う対象は、既に収集されている脳脊髄液を供与していただいた被験者のうち、年齢・性をマッチさせた126名(統合失調症32、双極性障害(うつ病相)32、大うつ病32、健常者32)であった。しかし、これまでにプロテオームに関しては212名(統合失調症60、双極性障害32、大うつ病60、健常者60)、miRNAに関しては136名(順に30、16、30、60)、GWASに関しては138名(30、16、46、108)の被験者に関するデータを得て、そのデータベースを構築した。これは、いずれも当初の計画を上回る数字である。 ただし、本研究は、2014年10月から開始されたこともあり、得られたデータ量は膨大であるため、その解析は現段階で終了しておらず、鋭意進行中である。予備的検討では、バイオマーカー候補として多数の有力分子が挙がっており(タンパク140分子、miRNA 39分子)、今後の解析によって極めて有望な分子に絞り込むことができると考えている。例えば、上記のfibrinogenは、精神医学のブレークスルーとなるのではないかと考えている。 以上から、達成度は「おおむね順調に進んでいる」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、脳脊髄液サンプルの収集を行う。これまでの実績から、年間100検体以上を見込んでいる。未服薬患者、通電療法前後の患者検体の収集に力点を置く。 ① タンパク解析:ELISAを用いて25年度までに収集された全検体(500検体以上)を用いて定量し、バイオマーカーになるか否かについて明らかにする。ELISAが市販されていない場合は、ELISA系の構築を試みる。有力なバイオマーカー候補に関しては、ROC曲線を作成して感受性、特異性の観点から最適のカットオフポイントを設定する。 ② miRNA解析:25年度までに診断と関連することが示唆された分子についてTaqMan® MicroRNA Assays(アプライドバイオシステムズ)のプローブを用いて、上記の500検体について多検体検証を行い、バイオマーカーになるか否かについて決定する。有力なものについては、感受性、特異性について明らかにする。 ③ miRNAやタンパク発現と全ゲノムデータとの関連を解析し、これらの発現を規定する遺伝子について明らかにする。タンパク発現を規定するmiRNAについても解析する。 ④ 臨床との関連:われわれは、患者の臨床データについては、診断や症状評価のみならず、認知機能や脳画像データも収集している。認知機能データとしては、知能検査(WAIS-R)、記憶(WMS-R)、遂行機能のほか、prepulse inhibition(感覚運動ゲイティング機能)についてのデータを得ている。脳画像はMRIによる脳構造体積、拡散テンソル画像、MRSについてのデータを得ている。そこで、タンパクやmiRNAと、重症度、認知機能、PPI、脳画像といった中間表現型との関連についても検討を行う。大うつ病患者の通電療法前後のデータを比較し、治療によって改善する指標となる状態依存性マーカーについて明らかにする。
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