研究課題
陽電子放射型断層撮像法(PET)と磁気共鳴画像化法(MRI)を組み合わせたPET/MRI装置は,機能画像と軟部組織コントラストに優れた解剖学的画像を同時撮像可能なことから注目されている。しかしPET/MRI装置を用いても,老化や種々の疾患の原因とされるフリーラジカルに関する情報と,それに伴う機能変化画像を得ることはできない。オーバーハウザー効果MRI(OMRI)は生体中のフリーラジカル分布を測定可能な唯一の手法であり,PETと一体化することで革新的な分子イメージングが可能となる。本研究では,世界で初めてPET/OMRI一体型装置を開発し,フリーラジカルの分布とそれに伴う機能変化画像の同時撮像を実現することを目的に研究を進めた。PET/OMRI一体型装置の開発を完了し、基礎的な性能評価を完了した。開発した装置は、PET部はフレキシブルな光ファイバーを用いOMRI部は0.0165Tの永久磁石を用いた。性能は、PET部の空間分解能は1.2mm、感度は中心部で1.2%であった。OMRI部の空間分解能は、実用的な撮像条件では空間分解能が1-2㎜、スライス幅は5㎜であった。 PET部とOMRI部の相互影響は観察されなかった。安定性も評価し、極めて安定性が高いことも確認できた。応用研究としては、ポジトロン核種からのポジトロンが生成するラジカルの画像化を試みた。その結果、観察可能な変化を検出することはできなかった。安定ラジカルであるニトロキシルラジカルの変化であれば検出できる可能背があると考えられる。また、ラジカルの他の高感度検出の可能性として、光計測法の検討も行った。また新規PET/ORMI装置への応用の可能性として、シリコンフォトマル(Si-PM)と新しいシンチレータの性能の評価も行い、装置の性能向上の可能性を評価した。
2: おおむね順調に進展している
PET/OMRI一体型装置の開発を完了し、基礎的な性能評価を完了した。安定性も評価し、極めて安定性が高いことも確認できた。これらの成果は、医学物理関係で最も権威のあるMedical Physics誌に発表済みである。また装置の性能向上や、他のラジカル測定法の開発にも研究分野を広げることで、成果を上げることができた。
今後は、プロジェクトの終了に向けて、これまでの成果をまとめていくとともに、今後の発展と周辺分野への研究の展開により、さらなるインパクトの大きな研究に発展させることを進めていく。具体的には、PET/OMRI一体型装置と光イメージング法との一体化による同時測定装置の開発や、PET/OMRI一体型装置の放射線治療への応用、視野の大きなPET/OMRI一体型装置の開発などが考えられ、これらの実現可能性などについて検討を行い、次の予算申請や企業との共同研究の可能性を探っていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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