研究課題/領域番号 |
25253078
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平岡 眞寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70173218)
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研究分担者 |
佐治 英郎 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40115853)
富樫 かおり 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90135484)
溝脇 尚志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314210)
松尾 幸憲 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80456897)
吉村 通央 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40597936)
中村 光宏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30584255)
小久保 雅樹 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, その他 (90283605)
澤田 晃 京都医療科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80543446)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 四次元放射線治療 / 低酸素 / 腫瘍動態評価 / 動体追尾照射 |
研究実績の概要 |
強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy: IMRT)は、広く臨床現場に普及しつつある先端放射線治療技術である。IMRTは従来法では不可能であった多様かつ良好な線量分布の実現が可能であり、放射線治療によるがん治療成績の飛躍的向上が期待されている。 しかしながら、本治療の最大の課題の一つは標的の動きに弱いことである。本研究では、この課題を根本的に解決するため、各部位における腫瘍の動体解析をもとに動体追尾IMRT技術を改良・発展させる。この技術をIMRTが得意とする低酸素環境などの生物情報を利用した放射線治療計画ならびに照射技術に統合させることにより、個々のがんの形状、動き、性状に合わせた究極の個別化放射線治療を実現させる。本研究では、この世界初となる革新的な放射線治療の基盤ならびに応用研究を実施する。 動物実験による低酸素領域、細胞周期動態のイメージングについての検討を終了し、臨床における低酸素イメージングの実践に移行した。FMISO PETによる悪性腫瘍内低酸素領域の撮影プロトコール作成を開始し、既報論文による検討を重ね、薬剤投与量、化学放射線治療前後の撮像タイミング、撮像回数について決定した。すでに当院倫理委員会にて同プロトコールを提出済みであり、現在承認待ちの状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A 放射線治療計画における生物・機能画像情報の有用性の評価(平岡、吉村、佐治、富樫) 原発性肺癌に対して体幹部定位放射線治療を施行した157人において治療前CTを評価し、間質性肺疾患(ILD)のCT所見が治療後の肺臓炎発症頻度に関与するという結果が示された。肺臓炎リスク低減のためには、従来より知られている肺照射体積を低減させることに加えて、治療前画像でILD所見を評価する必要性があることが分かった。また、肺癌に対して体幹部定位放射線を施行した15症例で、治療前に取得したFDG-PETや拡散強調MRIと治療予後について検討したところ、FDGの取り込みが多く拡散係数が低い症例は有意に予後が悪いことが示された。腫瘍径や性別等の既知の因子に加えて機能的画像が予後予測に有用であると示唆された。FMISO PETにて、化学放射線療法前後における悪性腫瘍内の低酸素領域の経時的変化、撮像タイミングを検証するプロトコールを作成した。現在当院倫理委員会にて審査中である。倫理委員会承認後、速やかに症例の集積を開始する予定である。 B 腫瘍動態評価と生物・機能画像の4次元化法の確立(松尾、溝脇) 呼吸同期FDG-PET/CTの撮像を14例(延べ19例)の膵臓癌症例で行った。RPM システムを用いた呼吸同期FDG-PET/CTの撮像法が複数の症例で安定して可能であることが確認された。高精度放射線治療計画における呼吸同期FDG-PET/CTの有用性を検討中である。 C 動体追尾SIB-IMRT治療の実現に向けた基盤技術の開発(小久保、澤田、中村) 動体追尾同時ブースト強度変調放射線治療(SIB-IMRT)治療計画用の高精度4次元線量計算モジュールを開発した。また、動体追尾SIB-IMRT治療の品質保証のための動体ファントムを開発した。これにより、動体追尾SIB-IMRTの4次元線量計算を可能とし、その線量計算も可能とするシステムが構築した。
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今後の研究の推進方策 |
A 放射線治療計画における生物・機能画像情報の有用性の評価(平岡、吉村、佐治、富樫) 今年度よりFMISO PETによる低酸素イメージングを開始する。新規導入されたPET CTを使用するため、まずは至適投与量、撮像回数、タイミングなどの条件検討を詳細に行いながら、症例集積を目指す。また、放射線治療計画に有用なPET用低酸素領域画像化において最適なプローブを新規薬剤を含めて引き続き検討する。同時に臨床での低酸素イメージングを目指した低酸素応答因子(HIF)の活性を用いた新規PETプローブの開発を継続する。さらに、開発中のヒト移植腫瘍において放射線治療の感受性に大きく関与する細胞周期を具視化できるような、in vivo イメージングの動物モデルでの有用性について確認し、臨床応用に向けたプローブ開発について検討する。 B 腫瘍動態評価と生物・機能画像の4次元化法の確立(松尾、溝脇) 呼吸同期FDG-PET/CT撮像を膵臓癌に対して行い、腫瘍の動態を正確に把握することで、腫瘍周囲の正常臓器への不要な放射線照射を避ける方法、非呼吸同期撮像に対する有用性の有無を検討する。臓器全体の動態観察が位相ずれによるアーチファクトレスで実現できるArea Detector CTを用いた、腫瘍の呼吸性移動量および変形量評価も継続する。肺癌に対して4次元CBCTを撮影して放射線治療中の腫瘍動態を明らかにする。新たに前立腺の動きが機能画像情報を用いた治療計画における線量分布に与える影響を評価する。複数の体内マーカー留置例において、治療中のマーカー動態を評価する。 C 動体追尾SIB-IMRT治療の実現に向けた基盤技術の開発(小久保、澤田、中村) 動体追尾SIB-IMRT治療計画の高速化を図るべく、プログラムコードの最適化や並列処理を導入する。また、動体ファントムを用いて動体追尾SIB-IMRT治療の品質保証を複数症例に対して実施する。
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