研究課題/領域番号 |
25253079
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70292555)
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研究分担者 |
関根 圭輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (00323569)
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (20612625)
小池 直人 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (50301081)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 分化誘導 / 膵前駆細胞 / 三次元培養 / 膵島 |
研究概要 |
ヒトiPS由来膵前駆細胞を用いた三次元膵島創出技術の確立 ① ヒトiPS由来膵前駆細胞への高効率な分化誘導系の構築 研究協力者である宮島らが開発を行ったヒトiPS細胞からPDX1陽性膵前駆細胞を分化誘導するプロトコルを基盤として、当研究室が有する複数のヒトiPS細胞株(201B6, 201 B7、TkDA、TkCB、皮膚、血液、肝細胞由来iPSCなど)を用いて、膵前駆細胞への高効率な分化誘導能を有するクローンの選別を試みた。その結果、ヒト内胚葉細胞への高効率な分化誘導能を有するクローンを選別し、このiPS細胞株から膵前駆細胞マーカーであるPDX1を発現する細胞への分化誘導が可能であることを確認した。 ② ヒトiPS由来膵前駆細胞を用いた三次元膵島創出法の確立 申請者らは、器官発生初期プロセスで生じる血管および間葉系細胞との相互作用の再現化により足場材料によらない立体ヒト組織誘導法を開発している。本年度は、この三次元組織誘導技術をヒトiPS由来内胚葉細胞へ応用することにより、機能的なヒト膵島を創出するための基盤的細胞操作技術の開発を試みた。その結果、器官発生初期プロセスで生じる血管および間葉系細胞との相互作用の再現化により足場材料によらない立体ヒト組織誘導法を開発した(Nature 499:481-484,2013)。さらに、この三次元組織誘導技術を応用することにより、ヒト膵島様の細胞構造体を構築可能であることを確認した。また、誘導されたヒト膵原基の組織成熟化過程において血管系の機能発現および分化に伴う細胞動態変化を可視化することを目的として、長焦点レンズを有した高速ライブイメージング共焦点顕微鏡による追尾定点観察系を構築し、異なる蛍光により標識された各細胞から構成される膵組織構築過程を三次元的に可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト内胚葉細胞への高効率な分化誘導能を有するヒトiPS細胞クローンの選別、iPS細胞株から膵前駆細胞マーカーであるPDX1を発現する細胞への分化誘導の再現性確認、器官発生初期プロセスで生じる血管および間葉系細胞との相互作用の再現化により足場材料によらない立体ヒト組織誘導法の開発(Nature 499:481-484,2013)、高速ライブイメージング共焦点顕微鏡による追尾定点観察系の構築について、研究計画通りの進捗を達成した。 したがって、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。 一方、iPS細胞株から膵前駆細胞マーカーであるPDX1を発現する細胞への分化誘導の再現性確認実験から判明した新たな問題点として、分化誘導効率が低いことが明らかとなった。そのため、来年度の計画を微修正し、膵前駆細胞の大量創出に向けて、まず内胚葉細胞への分化誘導条件の至適化を実施し、段階的に分化誘導効率を高める戦略を着実に実行することとした。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒトiPS由来膵前駆細胞を用いた三次元膵島創出技術の確立 ① ヒトiPS由来膵前駆細胞への高効率な分化誘導系の構築:膵前駆細胞の大量創出に向けて、内胚葉細胞への分化誘導条件の至適化を行う。そして、それらの効率よく誘導された内胚葉細胞からのPDX1を発現する膵前駆細胞およびインスリンを発現する膵β細胞の分化誘導を行い、大量創出を実現可能な培養条件の検討を行う。 ② ヒトiPS由来膵前駆細胞を用いた三次元膵島創出法の確立:膵β細胞株およびヒトiPS細胞由来膵前駆細胞を用い再現性の高い三次元膵島様組織の誘導法を開発する。誘導された膵島様組織の成熟化過程において血管系の機能発現および分化に伴う細胞動態変化を可視化することを目的として、長焦点レンズを有した高速ライブイメージング共焦点顕微鏡による追尾定点観察を行う。すなわち、異なる蛍光により標識された各細胞から構成される膵島様組織の構築過程を三次元的に可視化する。 2.ヒトiPS由来膵島作製のための細胞材料の至適化 膵臓分化蛍光レポーター遺伝子ノックインiPS細胞株の樹立 臨床応用に向けては、高純度な膵前駆細胞集団を再現性良く高精度に得る方法論の確立が必須である。これを達成するためには、iPSに由来する膵臓細胞の分化レベルが可視化された評価系の構築が必須となる。そこで、各段階の分化レベルをより簡便かつ詳細に区別するために、分化マーカー遺伝子プロモーター下流に蛍光タンパク質遺伝子を導入し、蛍光knock-in iPS細胞を樹立する。zinc finger nuclease(ZFN) 等を用いたゲノム編集(genome editing)技術を用いてiPS細胞株にknock-inベクターを導入し、複数のiPSクローンを解析し、適切に組み換えが起こったクローンのスクリーニングを行う。
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